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(ん)「んー、どっちかっていうと嫌い、かな」…切原+日吉



世界の全てが終わったみたいな日だった。
夏の暑さとか、蝉の声とか、沸き上がる歓声とか、嫌になるぐらい鈍く頭を刺激してぐるぐるぐるぐる響く。
夏の湿度にうねるくせ毛の中は蒸しかえっているのに、血の気が引いた貧血みたいな苦しさと冷たさに、肌に張り付く髪の毛やユニフォームが気持ち悪い。
握り締めた拳と噛み締めた唇にぐっと力を込める。
何に苦しいのか、負けたことなんだろうけど…悔しいとかじゃなくて、悲しいに近い。気持ち悪くていたたまれない。
あんなにも強く大きい先輩達が負けたんだ。
勝つのが当たり前の先輩達が負けたんだ。
幸村部長の解散の掛け声のあと、いつもなら先輩達と帰るけど一緒に帰ることなんて出来なくて一人で帰る。
どこにぶつけていいのか分からないムシャクシャして気持ちの悪い感情を持て余して歩いていたら、まるで待ち構えてたように日吉と遭う。
ちっぽけな俺は、酷く残酷な気持ちで日吉に声をかける。

「何…笑いにきた?」
「偶然なのに自意識過剰だろ」

この口調はイラつきを刺激する。

「笑いたければ笑えばいいだろ」
「笑うようなことじゃない」

別に求めちゃいねーけど、日吉は慰めるような奴じゃない。

「…あーぁ、終わっちまった」

肩を並べ自然と歩きだす。
夕日を背にして長く伸びる影が重なる。馴れ合い、触れ合い、そんなことしねぇけど影は仲良いみてぇに重なりあう。

「…良い試合だったな」
「はぁ?厭味かよ」
「お前の試合とは言ってない。幸村さんのことを言っているんだ」
「あったりまえじゃん、神の子、幸村部長だぜ」

神様みたいに絶対的な存在にいつか倒すと目指してた。
誰かに負けることなどないと思ってた。
倒すなら俺とさえ思ってた。

「ムカつく」
「同感だな」
「何、立海に対しての同情?」
「越前にだ」
「何でっ…あぁ、跡部さんね」

お互い勝つ目標にしていた1番の相手というのは、自分とこの部長で越前は年下のくせに俺達が勝ちたくて仕方がない相手に易々と勝ってしまった。
易々ってわけじゃねーけど、勝ちやがった。

「越前のこと好き?」
「好きなわけないだろ、お前こそどうなんだ?」
「んー、どっちかていうと嫌い、かな」

好きなわけがない、強い奴は好きだけど年下のチビで俺より強い奴は好きじゃない。
ましてや幸村部長に勝った奴なんて嫌いに決まってる。

嫌いとかで言い表せない醜い嫉妬心。嫌いなんて言葉で簡単に言い表せるわけがない。




Thanks!!4years old.




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