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(は)花にくちづけ…遊廓ジャブン



彼のねだる口調は小憎らしいが可愛いらしくもある。
美味しく食す唇で、(彼は本当に美味しそうに幸せそうに食べるから)卑猥な男達の雄を加えもし、蝕むように男達を虜にする。
その彼が客人にその唇を開きねだればほとんどのものは手に入る。
だから丸井ブン太は立海楼で二位の地位を誇っているのだ。

可愛い唇が尖り文句を言う。
口を開けば可愛いとは言い難く本当に小憎らしいのだ。
そのギャップさえも客人を虜にする理由であろうが、男に興味がないジャッカルにはその可愛さは通用せず丸井の不満は募り唇は尖るばかりである。

「なあ、ちょっとさっきみたいに俺にもやれよ」
「あれは男にする挨拶じゃねーぞ」

山吹屋に仕事に赴くジャッカルに暇だからだと丸井は後を着いて行き、初めてジャッカルが仕事をしている様を見た。
異国の言葉を紡ぐジャッカルの唇は不思議で仕方がなかったし、少し惚れ惚れとした気持ちになり見ていたのだ。
珍しさに初めは大人しく見ていたのだが、異国の客人の連れの女性と頬に口付け、挨拶を交わす様を見た瞬間、不機嫌あらわに眉を潜め唇を尖らせた。
唇を重ねようとすれば拒絶され、奪えば怒り諭される。
好きなのだから仕方がない。早く好きになればいいと毎回仕掛けるが、ジャッカルは男の丸井には興味がない。
それなのに、女にはあっさりと口付ける。それが挨拶だと言っても、やれと言えば男にはしないと拒否をする。

「挨拶なら俺にしたっていいだろ」
「だからよ、女にする挨拶で男にはしねぇんだって…」
「しろよっ!!」

ジャッカルの着物の袖を引き、首を傾げ頬を差し出しねだる。
柔らかな餅のような頬に仕方なくジャッカルは唇を寄せる。一瞬だが寄せた唇から本当に餅みたいな感触が伝わり、離した後に思わずジャッカルは己の唇をなぞる。

「これで満足か?」
「おうっ!!…けどよ、やっぱこっちだろい」
「…っん―――!!」

瞬時の笑顔は花が咲き綻ぶように溢れ、満足した顔の丸井にジャッカルは彼特有の丸井によく見せる諦め混じりの苦笑を漏らしたが、油断していたところ唇を奪われる。
唇からは山吹屋に出されていた茶菓子の味がする。
唇を離し、ぺろりと舌を出す丸井のしたり顔は客を落とすには充分な顔だが、やっぱりジャッカルには通じず怒るのだ。

「だから、止めろって何度言ったら…」
「うっせー、とろとろしてるほうが悪いんだろい」
「大切にしろって…」
「あんまりうっせーと、もう一度するぞ」
「……っ」

強気な言葉、絶対的な主導権。
だけど、丸井の本音なんか伝わりやしない。
諦めて黙り、先に歩きだしたジャッカルの背を悔しさに歯を食いしばり見つめるのは一瞬。
こんなことはいつものことだと、ジャッカルを落とす為、一等の花が綻ぶような笑顔を作り、名を呼び、丸井はジャッカルの腕に絡みついた。



Thanks!!4years old.




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