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「お前が風邪なんぞひくなんて珍しいな。」

「あはは…お恥ずかしい限りです。」

「まぁ、なんだ。休めるとき休んでおけ。」

「ありがとう、ございます。」


そんな会話を古泉の部屋でしたのが10分前で。今俺は缶詰を買ってきてくれと頼まれて買った桃缶を冷蔵庫にしまっている。

それにしても、いつ見てもすっからかんな冷蔵庫だな。体調が悪い時こそ消化がよくて栄養がいいものを食えと寝込んでいる家主に言いたい。

3缶は冷蔵庫に仕舞い残りの1缶は缶切りで開けてやる。

妹がいる身としては弱った奴を放っておく事が出来ない性分でな。たとえそれがいつもセクハラ紛いな事をしてくる古泉、でもだ。

黄色い甘そうな桃を皿に移して適当に買ってきた市販の薬も一緒に持っていってやる。

ゴホゴホと辛そうな咳が聞こえてくるからか、俺は無意識に眉に皺を寄せた。人が弱ってる所などあまり見るものではないな。


「古泉〜桃、食えるか?」

ガチャリと扉を開けて寝室に入れば帰ったと思ったと呟きながら驚く古泉を目にして俺は少し、笑った。


「僕の事など構わなくていいのに。移したらそれこそどうしたらいいか…」

「そんな柔な身体はしちゃいねぇよ。それよりほら、食えるなら桃、食って薬飲め。」


古泉が横になっているベッドに寄りかかりながら顔だけは古泉の方を向いて皿に移した桃とフォークを手渡してやる。

じっと桃を見つめて手の動きを止めた古泉は俺の方を向いて桃を加えたかと思えば後頭部を抑えられ半ば無理矢理キスなどされているこの状況!おい、古泉、本気で移ったらどうしてくれるんだっ!!

文句の1つでも吐いてやりたいのに舌を絡めとられ口内を好き放題暴れられたら言いたい事も言えやしなかった。


「ん…っ、ふっぁ…おまっ!」

やはり熱が出ているからか、いつもより舌が熱い。ぶん殴ってやろうにも俺の理性が病人だからと制止をかけていた。

桃の甘い味が口一杯に広がる。

これ以上は俺の肺活量がもたないと古泉の胸を叩こうとしたとき、やっと察したのか名残惜しそうに唇が離れていく。

唾液が糸をつくりなんとも生々しいと思いながら恨めしそうに古泉を睨めばいつものムカつく爽やかスマイルではなく、どこか寂しそうな顔で俺を見ていた。


「このまま貴方に僕の風邪を移してこの部屋でずっと看病出来たらどんなに幸せなのでしょうね。」

「それは…現実的に無理だと思うぞ。」

「わかってます。…わかっていても、僕は貴方に優しくされる度にそう思うのです。」


嫌な奴でしょう?と呟きながら古泉は残りの桃を食べはじめた。

コイツが何を考えているかなんて俺には分からないし、分かりたくもないがな、自己完結だけはヤメロ、胸くそ悪い。

黙々と食べ続ける桃を一切れ掴んで口に含んで、今度は俺から古泉に桃を口移しで食わせた。が、古泉みたいにディープなもんじゃないぞ!至って軽いやつだからな!


本日何度目かと聞きたくなる驚いた顔を古泉は俺に見せている。人間風邪ひくと思考がネガティブにでもなるのかね。

俺はため息混じりに口を開いた。


「閉じ込められるのは勘弁願いたいが…俺が風邪なんぞひいたらお前に看病を頼むさ。」

「っ!?」

「だから、お前はくだらない事考えてないでさっさと風邪を治せ!」

「…はい。ありがとうございます。」


少し泣きそうな顔で笑うから、俺もつられて笑って、古泉の頭を撫でてやる。普段なら絶対やらないがな!






またボードゲームでもなんでも付き合ってやるから早く治せ。





俺は、お前のそんな辛そうな顔なんかな、見たくないんだよ。



END



――――――――――
私自身風邪をひいている状況で風邪ネタ。

弱っている時に誰かが傍にいてくれるというのは、凄く幸せな事だと古泉に言いたい(笑)


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