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好きだと告白して、お付き合いをすることになったのが4ヶ月前。
やっと手を繋げるようになったのが1ヶ月前。
そして現在に至る、と……。
「ふぅ……」
ノートの上に僕と彼のお付き合いの軌跡を書き連ねて、一息つく。
手を握るまで3ヶ月、ということは次のステップに進むまではどれくらいの日数がかかってしまうんだろう。半年?もっと?気が遠くなりそうだ。
他の人がどれくらいのペースで関係を発展させているのかは知らないが、これは遅い、気がする。
「……まぁ、遅ければ遅いままでもいいんですけどね」
それが僕と彼のペースなのだから。ゆっくり進めればいいさ。
頬杖をついて窓の外から空を眺めながら、校庭を見る。今日も彼と手を繋いで帰ろう。
自分の手を包む他人の体温を思い出して、思わず頬が緩んだ。
「……?」
校庭の隅に、見覚えるのある人物の影が見えた。見間違うはずも無い、僕の恋人の姿だ。
人目を気にしてきょろきょろと辺りを見回しながら、植木の陰に隠れる。
何をしているんだろう。となんとなく眺めていたら、その彼の後に続いて、見慣れない女生徒の姿が。
遠目には何をしているのかよくわからないし、会話も全く聞こえない。ただ、その女生徒は顔を俯かせて恥じらいながら、彼に何か渡そうとしている。彼は首を振ってそれを拒絶する。でも、女生徒は必死に彼の身体に縋り付き……。
「何やってるんですか!!」
僕だってまだ彼の身体にまともに触れたことも無いのに!
思わず声を張り上げて立ち上がってしまった。クラスメイトの視線が一様に僕に集中する。
「あ、……す、すいません」
謝りながら、自分の席に座り直した。急いで校庭に視線を戻してみるが、そこに二人の姿は無い。
何だったんだろう、あれは。見た感じこ……告白、してるみたいだったが。
彼には僕がいるから、あの告白を承諾する訳が無いのは分かっている。僕は彼を信じている。
でも、やはり気になる。
放課後、彼に聞いてみればいいか。

そう思っていたのだが。
実際に放課後に彼と二人で歩いていても、なかなかその話題を振れない。
涼宮さん達と別れて、いつもなら二人で手を繋いで歩いている通路なのだが、今日は彼の手に触れることもできなかった。
今日の昼間に見た光景ばかりが頭にちらついて離れない。卑しい思いがあるわけでも無いのに、どこか後ろめたいのは何でだろう。
「あ、の……」
鞄を持つ手に力を込めて、なんとか言葉を口にする。
彼は隣を歩きながら、そっと僕を見上げた。
「今日の、昼休憩……ど、どこにいました?」
はっきりと、今日女の子に告白されていましたよね?なんて言えればよかったのに、遠まわしな言い方になってしまう。
彼は束縛されるのを嫌う人だろうから、出来るだけ無駄な詮索なんてしたくない。出来ることなら、彼の方から説明して欲しい。
そんな僕の思いからか、どうしても要点から少し外れた疑問しか投げかけられない。
「ずっと教室にいたけど」
「……そうですか」
教室……たしかに、あの時校庭にいたはずなのに。
わざわざ隠した?僕に知られたくなくて……?
いや、もしかしたら別に僕に言うまでも無いと判断したのかもしれない。余計な心配をかけまいと、彼なりに気遣ってくれているのかも。
思考を無理矢理上向きに持って行こうとしていたら、隣の彼が突然立ち止まった。
「俺本屋寄るから、ここで」
そう言って歩いて来た道を引き返そうとする。
「僕もご一緒しましょうか?」
「いや、いい」
じゃあな、と短い挨拶を済ませると、僕に背を向けて逆の方向へ歩き出した。
わざわざ引き返さなくても、途中で寄ればよかったのに。忘れていたんだろうか。
別れが惜しくて、しばらくその背中を眺めていたら、昼間に見たばかりの人影が見えた。彼の背中を叩いて声をかけて、それから二人並んで歩き出す。
「…………」
何故、と疑問を持つ前に、僕はその光景から目を逸らした。









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