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月曜の朝。
いつも坂の下で待っているはずの古泉の姿は無かった。

もしかしたら寝坊でもしたのかもしれない。
そう思って、坂の下で古泉が来るのを待っていたのだが、遅刻寸前になっても来なかった為、先に学校へ向かってしまった。

風邪でも引いたのだろうか。昨日は元気そうだったのに。あいつは一人暮らしだから、体調を崩したら大変そうだな。帰りに見舞いにでも行ってやろうかな。
なんて授業中に窓の外を眺めながら考えていたら、校庭で9組が体育の授業をしているのが見えた。
その中に、見慣れた姿を見つけてしまう。
古泉、ちゃんと登校してるじゃないか。遅刻して登校してきたのか?
どうやら短距離走をしているらしく、校庭に引かれた白いラインに沿って、体育教師の合図と共に二人ずつ走ってタイムを測っている。この暑い中、ご苦労な事だ。
古泉が走るたびに、9組の女子の黄色い悲鳴が聞こえてくる。
あいつは顔がいいし、礼儀正しいからな。さぞかし女生徒にもてることだろう。羨ましい。
古泉が一旦走り終わると、数名の女子がその周りを取り囲んで、何やら声をかけている。どうせ良いタイムが出たとか、その辺りだろう。俺にとっては面白くもなんとも無い。

……あんなに女子に好かれているくせに、当の本人は俺のことが好きなんだよな。

つまり、俺はあの9組の女生徒達に勝った訳なのだが…優越感も何も感じない。これで古泉が可愛い女の子だったらまだ良かったのだが、残念な事にどこからどう見てもあいつは立派な男性だ。
神様って残酷だな。

「ちょっと……キョン、キョンってば」

なんて考えていたら、古泉いわく、この世界の神様みたいなものであるハルヒから、つんつんと背中をシャーペンでつつかれた。
なんだよ、痛いだろうが。
「あんたの番よ、何ぼさっとしてるの」
「俺の番?」
前を見てみると、教師がじっと俺を睨みつけていた。
なんだ、なんの順番が回ってきたんだ?
黒板を見てみると、今は国語の授業らしい。さっきまで数学をやっていたような気がするのだが。
焦って、机の中から今の授業の教科書を取り出す。
「何やってんの、馬鹿ね」
ハルヒが後ろから小声で文句を言ってくる。別にお前には関係ないだろうが、放っておいてくれ。
「そんな事言って、どこから読めばいいのかあんたわかってるの?」
「……」



なんとかハルヒに今やっている場所を教えてもらって、その授業は事なきを得た。
代わりに何かある度にこの一件をネタに背後からちくちくと小言を言われる羽目になってしまったが、それは仕方ない…のか?もしかしたら、今日一日これが続くんじゃないだろうか。勘弁してくれ。
だいたいこれもそれも古泉なんかを眺めていたからいけなかったんだ。あの野郎、どこまで俺に心労をかけたら気が済むんだよ。
朝だって、遅れるなら遅れると連絡の一つぐらいよこせ。なんであいつのせいで俺が遅刻寸前に登校しなければならないんだ。まぁ、遅刻寸前については、普段から似たようなものなのだが。
何となく携帯電話を取り出して、ディスプレイを眺める。
そういえば、今日はまだ古泉と話してないな。
ここ最近朝から顔を合わせていた為か、あえて会わないでいると変な気分だ。
……いや、別に会いたいわけじゃないぞ。あいつを気にしているとか、決してそんなものじゃない。
手の中の携帯電話がぷるぷると震えた。小さなサブディスプレイの画面に、メールのアイコンと古泉の文字が表示される。
携帯電話を開いて、受信メール一件の文字を確認してから、それを開いてみる。
『昼に、屋上へ来ていただけますか?』
朝の件の謝罪かと思いきや、他には何も無くこの一文だけ。
とりあえず昼に屋上に向かっても、何の問題も無いので、了承の返事を送ってから携帯電話を机の中に突っ込む。何の用事があるんだろうな。

俺の後ろで机に顔を伏せて、昼寝しているらしいハルヒへと視線を向けた。
今現在、こいつの起こした不思議な事件の渦中にいるはずなのに、こんなにも平和なのは何でだろう。







あきゅろす。
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