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隣を歩いていた古泉が立ち止まって、俺のほうを向きながら口を開く。
「そろそろ、帰りましょうか。ご家族も心配するでしょうし……」
は?と返してしまいそうになった。
だからお前は何がしたかったんだよ。俺はわざわざお前が出かけたいと言うから、こんな休日に着替えて、クーラーの効いた涼しい自宅から灼熱の太陽の下に出てきてやったんだぞ。
ただ一緒にいたかっただけ?俺が好きだから?そんな絵に描いたようなウブな思考、俺は認めない。
こんなのただの友人同士と変わらないじゃないか。

「……じゃ、最後にあれ食おうぜ」
俺は道端にあるソフトクリーム屋を指差した。
「いいですよ。何味がいいですか?買ってきます」
別に女の子でもあるまいし、奢ってくれなくてもいいんだが。
まぁ買ってくれるというのならば、甘えさせてもらおうか。ハルヒのせいで今月も小遣いがやばいんだ。
普通のソフトクリームを頼んで、道端にあるベンチに座る。
そのまま少し待っていたら、古泉が白いソフトとピンクのものを持って戻ってきた。
ソフトクリームを受け取ると、古泉も俺の隣に座る。すぐ隣に座ればいいのに、間に一人分ぐらい隙間を空けて。
なんでこいつはこうなんだ。
仕方が無いので俺から近寄ってやる。
すぐ隣に移動すると、古泉の身体がびくりと震えた。
これぐらいで緊張してるのか?元々デートっぽいことがしたくて俺を誘い出したんだろうが。この程度で怖気づいてどうするんだよ。もっと、こう……。
「それ、うまそうだな」
「ああ、おいしいで」
言い終わる前に、奴の手の中にあるソフトクリームに食いついてやった。甘ったるいストロベリーの味が口内に広がる。
「……ん、」
ついでに口の周りについた残骸を舌で舐め取る。こっちも美味いが、俺はやはり普通の白いやつの方が好きだな。
隣の男の反応が全く無いので、どうしたのかと思って顔を見上げてみると、古泉は喋りかけのまま口を半開きにして、固まっていた。
そしてじわじわと頬が紅潮していく。
「お前も食え」
自分のものを口元に持っていってやると、やっと我に返った古泉がゆっくりと動いて、先端に少しだけ口をつける。
そして一言。
「……お、いひいです」
だからなんで噛む。

それから古泉は手に持ったストロベリーの如く顔をピンクに染めたまま、別れ際まで終始ぼんやりとしていた。

お前は俺とこういったことがしたくて、誘ってきたんだろうが。もっとしっかりしやがれ。
古泉と別れて、一人で電車に揺られながら苛々と考える。
だいたい向こうが俺のことが好きなんだろ?何で俺のほうから動かないといけないんだよ。情けない。男ならもっと相手をリードしてだなー……て、俺、さっき何をした?
先ほどの自分の行動を思い出す。人通りの少なくない通路に置かれたベンチの上で、男同士で……た、食べさせあいっこ、を。
な、何やってんだ、俺。
ぼっと火がついたように顔面が熱くなる。
いや、これは全部あいつが悪いんだ、あまりにも何もしてこないから……!決して何かして欲しいわけじゃないが、ここまで動きが無いとイラつくだろうが!
言い訳じみた言葉をぐるぐると脳内で巡らせる。何で俺がこんなに悩んで焦らないといけないんだ!

……次からは、きちんと周囲を見て行動しよう。







あきゅろす。
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