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「僕は、あなたの事が好きなんです」


……は?なんだって?

目が点になるってこんな時の心境を指すんだな、と、今身を持って理解してしまった。
好き?すきすき……、ああ、友達として、って意味か。紛らわしい事言いやがって。だったら俺もお前のことは嫌いじゃないぞ。
「何か勘違いされる前に断っておきますが、恋愛の対象として、という意味ですからね」
直前の俺の思考が完全に否定されてしまった。そうか、そっちか。
なんだが告白をされているという実感が沸かなくて、どこか他人事のように思えた。
俺自身別に同性愛とか偏見は無いし、当人の問題だから好きにすればいいと思っている。しかし、それは俺自身が対象にされるのなら話は別だ。
「お、お前、俺が好き……って」
古泉の手に触れられている両肩に、悪寒が走る。
そういった意味で俺が好きならば、今のこの状況はとても危ないのではないか。同級生の友人相手に貞操の危機なんて感じたくないぞ。
今すぐにコイツを突き飛ばして逃亡したい衝動に襲われるが、生憎ながら俺の身体は俺の思い通りには動いてくれない。
「でも、僕はこの機会を利用して、あなたを手に入れようだなんて思っていません。だけど、少しだけ、ほんの少しだけでいいので、僕のわがままに付き合ってくれませんか。嫌でしたら、拒否してくれても構いません」
その『拒否』が出来ない状況なんだがな、今は。
でも、あまりにも真面目な顔で語る古泉に、そんなことは言えない。
「少しの間、僕に付き合っていただけたら、その後はもうあなたの事は諦めます。元々適わぬ恋だと思っていましたから」
「……何に付き合えばいいんだ?」
あまり良い予感はしないが、今の俺には選択肢なんて存在しないも同然だ。
選べないのなら、さっさと用件を聞いたほうがいい。
「数日だけでいいので、僕と恋人関係になってください」
恋人関係。
頭の中でその単語を復唱する。
呆然と古泉の顔を見上げていたら、突然顔を赤くして、焦ったように喋りだした。
「あ、こ、恋人関係と言いましても、変な事はしませんから!き、き……キス……も、それ以上も…………手ぐらいは握ってしまうかもしれませんが……」
噛みながら何をいっているんだ、この男は。誰もそこまで考えちゃいないのに。
初めて見る古泉焦り顔に、思わず吹き出す。こいつでも慌てたりするんだな。しかもこんな事で。
突然笑い出した俺を、情けない顔で見つめる。普段の胡散臭い笑顔とは全然違う。

いつも年相応以上に落ち着いているのに、俺なんかを相手にして古泉がここまで崩れるとは意外だ。
少しくらいならこいつの言う『我が侭』とやらに、付き合ってやってもいいかもしれない。とは言っても、付き合わざるおえない状況なんだが。
この件が落ち着いてから、古泉と以前のように友人としてやっていけるかどうかは分からないし、もしかしたら互いにギクシャクとした関係になってしまうかもしれない。そんな不安はあるものの、今の俺は古泉を拒否する権利なんて持っていない。何とかしてこれを解決の糸口にするしか無いだろう。








あきゅろす。
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