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特に問題が無いからとは言っても、このままで良い訳が無い。
あまり、頼りすぎるのもどうか……なんて思いながらも、こんな時は長門に助言を求めてしまう。

自宅に帰って、自分の部屋のベッドの上に胡坐をかきながら、携帯電話を取り出した。
そういえば今日は部室で長門の姿を見なかったな。掃除当番だったのか?
アドレス帳から番号を呼び出して通話ボタンを押すと、数コール後に電話口に出てくれた。
簡単な挨拶をして、今の状況を簡潔に説明する。特にややこしい事にもなっていないから、細かく伝える必要も無いだろう。
「古泉は取り合えず暫くこのままで、って言ってたが、お前はどうすればいいと思う?」
「事態の修復は、簡単」
特に考える間もなく、長門が答えた。
「本当か?どうすればいいんだ?」
「涼宮ハルヒが、古泉一樹が『いいと言うまで』命令を聞き続けろと言ったのならば、その言葉を古泉一樹が口にすればいい」
なるほど。たしかにそんなこと言っていたな。
「じゃあ俺が古泉にもういいって言って貰えばいいんだな」
「おそらく」
「ありがとう、長門。助かるぜ」
礼を言ってから、通話終了ボタンを押す。
そして、古泉に今からそちらへ向かうとメールを打った。別に明日でも良かった気はするが、厄介ごとはさっさと始末してしまいたい。
制服のまま出かけようとしたら、母親に呼び止められた。もう暗いし、普段はいまから夕飯の時間だ。
しょうがないから晩飯はいらないと伝えて、家を出る。帰り道に何か買って帰るなり、このまま古泉ん家の飯のお世話になればいいか、なんて適当な事を考えながら。





扉の隣に設置されているインターホンを鳴らすと、古泉が部屋着のままの姿で出迎えてくれた。
「どうしたんですか?いきなり……」
「入るぞ」
開かれた扉の隙間から、中に入る。すぐ終わる用件なんだが、玄関先で立ち話もなんだしな。
古泉が玄関の扉を閉めるのを確認してから、話題を切り出した。
「さっき、長門に相談してみたんだ」
古泉が少し目を大きくして、俺を見る。
「ほら、ハルヒはお前がもういいって言うまで、お前の舎弟でいろって言っててただろ?だからお前が俺に『もういい』と言ってくれれば、元通りになるんじゃないかって」
「嫌です」
……は?何だって?
「お断りします」
念を押すように、二回続けて拒絶の言葉を口にされた。
なんで嫌がるんだ?お前だってさっさと解決したいだろうに。
「せっかくの機会なのに、直ぐに元通りにしてしまうなんて、もったいない」
せっかくの機会……何の話だ。
古泉が足音を立てずにゆっくりと近づいてくる。いつもと少し違う雰囲気に距離を取ろうとしたら、逃げないでくださいと言われた。
途端に足の裏に根が生えたかのように、足が地面に縫いつく。くそ、なんなんだよこれ!
「危害を加えるわけではありません。少しでいいので、僕の話を聞いていただけませんか」
「……なんだよ」
嫌な予感がする。聞きたくない。
でも、ここでこいつを変に刺激しない方が無難だろうと、俺の直感が伝える。今の俺じゃどう足掻いても古泉には敵わないからな。
古泉は俺のすぐ目の前で立ち止まると、両肩を握るように手をかけてきた。そして少し高い場所から俺の顔を見下ろす。
「受け入れてくれとは言いません。ただ、聞いてくれるだけでいいんです」
だからなんなんだよ、さっさと話せ。そしてその手も離せ。
抗議しようにも、どうやらこいつに対する罵詈雑言も口から出ない仕組みになっているのか、何も喋れない。
古泉がずい、っと俺の顔に自分の顔を近づけてきた。鼻先が触れ合ってしまいそうな距離だ。古泉の長い前髪が、俺の頬をくすぐって、少しこそばゆい。
そんな至近距離で、たっぷりと時間をかけてから、古泉が口を開いた。







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