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昼に自分の昼食を終えてから、彼の所に食事を運んでみたら、部屋の中の風景はやはり朝と変わり無かった。
腹は減っているし、喉も渇いているだろうに。無駄な頑張りをするものだ。
だからといって、彼が床に落ちたものに手をつけていたら、それはそれで驚愕していたが。

「お昼ですよ」

反抗的に僕を見る彼に向かって、にこにこと笑いかけながら、足元にトレイを置く。
また食事を持ったまま近づいて、叩き落されたら困るから。
「では、ここに置いておきますので、僕が部屋から退散した後にでも食べてください」
これだったら、彼もまだ食事を口にいれてくれるかもしれない。
相変わらずそっぽを向く彼を放っておいて、僕は朝食の後片付けをする。
放っておいて、変な臭いでも発せられては困る。この部屋は僕だって使用するのだから。
まずは、手で拾えるものは拾い集めて、細かいものは持ってきたタオルで拭き取る。
……何で僕がこんな雑用をしなければならないのだろう。
そう考えると、今同じ部屋にいて、手の届く距離にいる彼に対する苛立ちが、ふつふつと湧いてきた。
僕は人の尻拭いが一番嫌いなんだ。やってしまった本人が自分で処理すればいいのに、何故代わりに僕が処理しなければならないのか。
部屋の隅に座る人物に目を向ける。僕の行動を伺っていたようだが、視線が絡んだ途端、顔を背けて横を向いた。
だが、彼が見ていようが見ていまいが関係ない。
「もう部屋はあまり汚さないでくださいね。僕も、いつまで穏やかでいられるかわかりませんから」
僕の発言に対して、反応は無い。でも聞こえていない訳では無いはずだ。
反応を返さないのは、それが彼の精一杯の虚勢なんだろう。










「幕僚総長、古泉幕僚総長!」
「何ですか、二回も呼ばないでも聞こえてますよ!」

苛立った感情を隠さずに返すと、すいませんと沈んだ言葉が聞こえてきた。
何から何まで勘に触る男だ。
「やっぱ最近疲れてるように見えて、一回じゃ聞こえないかなぁーっと……」
「一回で返事を返さない時に、二回目を呼んでください」
「それもそうっすね」
誤魔化すように頭に手を当てて、笑う。その能天気な笑顔がさらに気に入らない。
彼も他の人に頼んで、どこか他の場所に配属にしてもらおうか。いや、先日ちょっとお願いを聞いて頂いたばかりなのだし、ある程度は我慢しなければ。
「たまには有給でもとったらどうですか?溜まってるんでしょ?」
「…………」
うっとおしい。口を開けば仕事に関係の無いことばかり。
僕のことを気遣う前に、自分の将来について考えた方がいいんじゃないのか。
「有給は、あなたに言われなくても必要あれば使用します」
「そんな事言って、どうせ使う気無いんでしょ?……あ、趣味とか無いんすか?たまには休んで、休日を趣味に費やすのもいいと思いますよ」
話してばかりで、手が動いていない。いつまで彼は自分の職務を放棄し続けるつもりなんだろう。
だから今だに給与もろくに上がらないんだ。こういう人間に限って、自分の貰いが少ないのを勤め先の責任にしたりする。最低の人種だ。
「趣味なんて、特にありませんから」
適当に返しながら、僕は僕の職務を続行する。

ディスプレイの隅に表示されている時計に視線を向ける。
あと二時間後には、彼のところへ行ってあげないといけない。









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