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そして、放課後。待ちに待った時間が来た。
僕はチャイムと同時に走った。彼のいる教室まで。
今すぐにでも彼を抱きしめて、愛を囁きたかった。

「――……っ!」
彼の名を叫びながら、五組の教室に突入する。
まだ放課後のHRが終わったばかりのようで、黒板の前に担任の教師の姿も見えた。
しかし、その程度の事は既に走り出してしまった僕にとって障害にもなりはしない。
「こ……古泉…」
教室の隅で、彼が苦い顔をして僕に視線を向ける。
僕は五組の生徒の視線を一身に受けながら、ずんずんと奥へと入った。そして彼の席の隣で立ち止まる。
彼が唖然となって僕を見上げる。それと同じように、後ろに座っている涼宮さんもぽかんと僕を見上げた。
僕は固まってしまった彼の片手を取る。
「すいません、あなたに寂しい思いをさせてしまっていたようで」
渾身の想いのこもった言葉に、びくびくと彼の身体が震えた。恥ずかしがっているに違いない。
「あいしています」
彼の眉間が痙攣する。久しぶりに聞く僕の愛の言葉に、喜んでくれているのだろうか。
「こ……」
「好きです」
「こいず」
「大好きですから!」
「うるせえっ!!」
目の前に火花が散った。
誰も座っていない席に激突して、大きな音を立てて倒れこむ。打ちつけてしまった太ももと、熱く熱を持った頬が痛んだ。
涼宮さんが驚いて立ち上がる。
「あ……」
一瞬、自分の置かれた状況が分からなかった。
床に座り込んだ僕と、それを見下ろす彼。
……もしかして、殴られた?





「……僕は、諦めることにしました。今日殴られて、目が覚めましたよ」
「そうか。だからどうしたとしか言えないが」
腫れた頬は、風になぶられるだけでひりひりと痛んだ。
会長はとても興味無さそうに、火のついていない煙草を指先で弄ぶ。
「初恋は、実らないものなんです……僕はそれを今日身に染みて理解してしまいました」
「だからどうした」
人は、冷たい。
慰めて欲しいときに、望む言葉をくれる人なんて早々いない。
僕は生徒会室の机に突っ伏した。ごちん、と木製の机が良い音を出す。
その体制のまま、目を瞑る。真っ暗になった瞼の裏に蘇るのは、彼の怒った表情ばかりだ。そういえば純粋に僕自身に向けられた彼の表情は、ほとんど怒った顔か無表情ばかりだった気がする。なんで今まで気がつかなかったんだろう。
あの時、コンピ研の部室で倒れて、部長氏に助けられた時に、もう既に気がつくべきだったのかもしれない。
望みなんて全く無いのだから、さっさと諦めるべきだと。











あきゅろす。
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