14.【盆の幻想】
8月…
また盆がやってきた
この時期になると思い出す光景がある
それは暑い夏だった…
道央の渓流を釣り終えた私は、帰路にある小さな峠にさしかかっていた
真っ昼間のいつもの峠道…行き交う車も無く適度な速度で坂を登って行った
間もなく下りに入る前の短いストレート…
その先で道路は直角に左に折れる
短いストレートにさしかかった私は直角のカーブに視点をあてていた
対向車線の向こう側に見える白いガードレール…
日差しが反射してるのだろうか、キラキラと眩しい
細めた目で凝視する
何かが光っている…
人が…立っている
女の人だ…
車はガードレールに近づいていく…
だが、そこに人の姿は無く、あるのは花瓶に添えられた花だった
ちょうど盆の時期の話だ
あれは暑い夏が魅せる幻想だったのだろうか…
今となっては知る由もない…
river side
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