「『オーソックス』
主人公「河野たかし」(こうのたかし)♂
元いじめっ子にして、元副社長という経歴を経て、会社の社長へと上り詰めた天真爛漫な男。現在25歳。
基本的に人任せだが何かと上手くいく。
「山口ともや」(やまぐちともや)♂
元いじめられっ子にして、世界シェアの大会社を作り上げた男。
親が金持ちで、そのせいでいじめにあっていた。現在25歳。
気が弱いが、自分の意思はかなり強く持っており、そのおかげで偉業を成し遂げた。
基本は優しい。
「マスター」♂
主人公である河野たかしと何故か意気投合出来る、ある意味凄い喫茶店のオーナー。
現在30代後半。
この物語の”ある意味”でのキーパーソンであり、一番謎の男である。
何かと歌うが、上手くはない。
「横山」(よこやま)♂
主人公である河野たかしによって職を無くした男。
現在23歳。
若いが、かなりのやり手だが、運だけは人一倍無い。
「ナレーション・客・秘書」♂♀不問
ある意味一番自由。
ナレ「この会社の社長[山口ともや(25)]は、幼い頃から靴が好きで、大学2年の時大学を中退し、小学校からの『親友』「河野(こうの)たかし(25)」と共に、靴(ソックス)会社『オーソックス』を設立。
その後、山口の先進的で斬新なセンスで、他に類を見ない靴を販売。
オーソックスは急激に成長し、今や世界シェアの大会社になり、すべて順調に進んでいくはず・・・が。」
河野『え・・・今なんて・・・』
山口『だから、河野君・・・。今までありがとうって。』
河野『・・・な、なんで!!今までずっと一緒にこの会社を育ててきたじゃないか!!それなのに、なんで・・・』
山口『・・・ハッキリ言って君にセンスはないし、たいした功績もあげない・・・。残業も断るし・・・。それなのに、ただ友達というだけで君が「副社長」というのは・・・、他の社員にとっても悪いだろ・・・。急だけど、分かってくれ。』
河野『そ、そんなっ・・・。・・・でも!俺達友達だろ!?なぁ山口!俺達親友だろ!!』
山口『もう!』
河野『・・・!』
山口『河野君はいっつもそればっかり!昔から嫌だったんだよ!小5の時も河野君がテストでビリになるのが嫌だからって、僕のテストに「河野」って書けって言ったよね!』
河野『あ・・・、あれは!冗談だよ!冗談…』
山口『いーや!!冗談なんかじゃない!!…あの時河野君は、僕が小1から好きだったあけみちゃんのプール下着を盗んだこと、ばらされたくなかったら書けって言ってたもん!!あれは、れっきとした恐喝だ!!』
河野『ち、違うよ!!あれは・・・って話がそれてるぞ!』
山口『そして最後に河野君はいっつも言ってた!!「親友だよな」って!!』
河野『・・・!あ、ほら!あ、あれだ!若気のいたりとかなんとか・・・。あぁ、頼む、クビだけはっ!親友だろ!あ…』
山口『ほら!!いつも自分の立場が悪くなるとすぐ言うんだ!!』
河野『っ・・・』
山口『・・・あと、君が僕を親友だと思ってても、僕は君を知り合いとしか思わない…。』
河野『「ピキッ」…なに?』
山口『あ・・・、だ、だって!僕、君に何回いじめられたことか!!それにこの会社作る時だって僕は一人でいいって言ったのに、君が無理矢理入ってきただけじゃないか!!』
河野『うっ・・・!』
山口『しかも、いつもダラダラして!!もう迷惑なんだよ!!で・・・出てけ!!』
河野『てっめぇ・・・!そんなことしてただで済むと思ってんのかぁ!!?』
山口『ひっ!』
河野『・・・くそ』
山口『・・・も、もう君は・・・いらない・・・。この会社に必要ない・・・。・・・だから、帰ってくれ・・・。』
河野『ちっ・・・、ちくしょー!!』机をたたく
山口『・・・』
外
河野『ちくしょー、あいつめ・・・。あっさりクビにしやがって・・・。これから先どうすりゃいいんだよ・・・。あ、そうだ。』
河野、小さな喫茶店の前に着く
カランカラン
マスター『いらっしゃいませ〜!』
河野『よ!マスター!』
マスター『ん?なんだお前か。・・・ってかこんな真昼間から来るなんて、もしかして会社クビにでもなったか!?ハハハッ!(酒を飲む)ゴクッ・・・』
河野『俺と一緒に会社作らねぇか?』
マスター『ブーッ!!ゴホッゴホッ!!・・・色々話はつかめねぇが、とりあえず聞こう。お前、勤めてた会社は?』
河野『あぁ、クビになった。』
マスター『そうかぁ・・・え?副社長なのにか?』
河野『あぁ。』
マスター『へぇ〜、そりゃ・・・、災難だなぁ。ま、仕方ないさ。お前はいつかそうなると思ってたしな。』
河野『・・・殴っていいか?』
マスター『はい、うっそうそー♪あなたは殴ったりとかそんなこと絶対しませ〜んね♪ごめ〜んね!』
河野『なんでもいいから会社つくろうよ〜・・・』
マスター『そんなインスタントみたいに簡単に言うなよ。簡単じゃないし。大体俺が会社入ったら喫茶店はどうすんだよ』
河野『そりゃ潰しゃいいじゃん』
マスター『無理に決まってんだろ。・・・もうあきらめな。まぁこれを機会に真面目に働くってのもいいと思うぞ?』
河野『まじめに働いてたっつうの。あ〜ぁ・・・諦めるしかないか〜・・・』
マスター『・・・ってかなんで急に会社作りたくなったんだ?』
河野『社長を見返したくて』
マスター『ほ〜ん。・・・そういやあの社長、お前の友達だろ・・・?よくクビになったな!』
河野『るせーよ。色々あんだよ』
マスター『なんだ?禁断の恋か?』
河野『馬鹿か』
河野『ハァ・・・。まぁ、マスターの言う通りかもな・・・。よっしゃ!なんかマスターと話してたら楽になったよ。ありがとう』
マスター『俺は礼を言われるようなタマじゃねぇよ。ま、お前が元気になったならいいじゃねぇか。』
河野『うん。じゃ、俺帰るわ。・・・あ、ちゃんと仕事探してみるよ』
マスター『おう!頑張れよ!じゃあな!』
河野『あぁ』
カランカラン・・・
マスター『・・・あ〜ぁ、あいつがクビ・・・か。妥当だな。』
カランカラン
横山『あの、すみません・・・』
マスター『あ、は〜い、いらっしゃ〜い』
横山『あの・・・、とってもらってもいいですか?』
マスター『ん?・・・あぁ、席ね!はいはい、タバコがダメとかそういうの?』
横山『あ、タバコがダメとかそういうのじゃないんです。』
マスター『あ、タバコがダメとかそういうんじゃないんだ。』
横山『はい、タバコがダメとかそういうのじゃ・・・もういいですか?』
マスター『うん』
横山『あ、で、とって欲しいっていうのは、この人なんです』
河野『会社作ろうぜ!』
横山『この人、「会社作ろうぜ!」ってずっと言ってきてうざいんです。』
マスター『あ〜、それはかわいそうに。自縛霊やそこらとは格が違うからね。』
横山『そんなぁ!!』…
次の日・・・
マスター『はい、みんなマスターに注目!はい、昨日は河野君、お前がクビになり、何を思ったか会社を作ろうと決意。そして何故かバーのマスターに話を持ち掛けるが見事断られ、まともな道に入るのかと思いきや街を歩いていた・・・えーと・・・』
横山『あ、横山です』
マスター『そう、横山君!いかにも断りべたな横山君を無理矢理誘い、昨日の夕方、なんと!会社が出来ました〜!』
河野『いえ〜い!!』
マスター『いえ〜い、さて、ここで〜!マスターから一つ質問がありま〜す。それは、会社の場所について〜。どうして、会社が、私の店なのかな〜?』
河野『しゃーねーだろ?会社建てる金がないんだから』
マスター『まぁ・・・、いいんだけどね』
横山『え、いいんですか?』
マスター『うん。まぁでも横山君、ここ入ってもよかったの?』
河野『大丈夫だって。横山はさ、今だに実家で何もせず親の脛かじってる怠けもんだから。』
横山『え?違いますよ?ちゃんと会社入ってますよ?』
河野『会社ってここだろ?』
横山『いいえ?違いますよ。普通に結構でかいとこで働かせてもらってますよ。だからここにいちゃいけないんですよ。本当は。』
マスター『河野・・・、お前らしいな!』
河野『だろ?俺らしいだろ!ハハハ!さぁ、横山君!あっちやめてこっち来なさい!』
横山『うん、無理ですよ』
河野『大丈夫、俺が話つけてやっから』
横山『え・・・、いや、無理でしょ。だって僕が勤めてる会社、あの大手『オーソックス』ですよ?』
マスター『・・・』
河野『・・・』
・・・ガチャッ
『よ〜し、退職完了しました〜!』
横山『えぇー!?何すんの!?ってか、なんでそんなこと出来るの!?』
河野『俺あそこの社長と親友なんだよ』
横山『・・・だったら尚更っ・・・!はぁ・・・気になることはたくさんあるけどもういいです・・・。僕、この店の前を通った時から人生が物凄く狂いましたよ・・・』
マスター『待て待て、それじゃマスターが悪いみたいでマスターちょっと傷つく・・・』
横山『あっ、いえ違いますよっ!マスターは悪くないですよ!』
河野『ま、なんでもいいや。さて、これで、横山君は仕方ないので、この会社に入っていただきます!』
横山『かなり強引に、っていうか無理やり引き抜かれた感じですが、もう仕方ないので入ります、よろしくお願いします。』
河野『拍手〜!』
マスター『わー』
次の日・・・
マスター『はい、昨日は横山君が正式に入社しました〜拍手〜。ま、それで横山君は前の会社を退職しました。そして、横山君は退職金を貰っていました!』
河野『なにぃ!?』
横山『いや、普通は貰うでしょ!』
マスター『それで横山君は、何と!そのお金を、会社の為に寄付してくれると言うのです!』
横山『えぇー!?僕知りませんよ!?』
マスター『マスターは、河野君から聞きました』
河野『僕は横山君に聞きました』
横山『言ってないですよ!?河野さんの出まかせですよ!?』
マスター『なに?本当か?』
河野『んーん』
マスター『っていうかもうお金はマスターが持ってるので、勝手にこちらで使いま〜す』
横山『え!?なんで持ってるんですか!?』
マスター『ま、色々とね、あーだこーだとね・・・(笑)』
横山『・・・え?あ、も、もういいや・・・』
マスター『そして、社長から重大なお知らせがあります。どうぞ!』
河野『センスがない!!』
マスター『・・・だ、そうでございます。』
横山『ちょっと、意味が・・・』
河野『そのままだよ。この会社にはセンスのいい奴がいない、だから売れるもんが作れないんだよ。』
マスター『まだなんも作ってないけどね』
横山『あの〜・・・僕もともと商品開発部にいたんですけど・・・あ、でもダメか。もとがオーソックスだから、同じようなものになっちゃうな』
河野『いや・・・いけるんじゃないか?これを、+αしていけば・・・、オーソックス潰せるかも』
横山『え!?潰すんですか!?』
マスター『何だ、言ってなかったのか?』
河野『あ、忘れてた。俺、この前までオーソックスの副社長やってたんだけど、クビになったんだ。だから見返してやろうと思ってな』
横山『え!副社長って・・・!よくクビにされましたね!!』
河野『・・・皆言うなぁ・・・。』
マスター『普通はクビにならんからな』
横山『あ、待って下さい。よく考えたら元オーソックス社員が二人で作ったものって、それはオーソックス商品+αじゃなくて、ただのオーソックス商品じゃないっすか?』
河野『・・・あぁー!!そうか!!』
横山『勝てない・・・ですよね』
ナレ「その頃、オーソックス社は」
山口『あ、そういえば河野君に退職金あげるの忘れてた。また渡しに行こうっと』
秘書『・・・優しいんですね』
山口『うわ、びっくりした!ごめん、いたのに気付かなかった。』
秘書『秘書ですので、いつでもお側についています』
山口『あ、ちょうどよかった。よかったら、これ河野君に届けてくれない?』
秘書『かしこまりました。ところで、河野様とはどなたでしょうか?』
山口『あ、おとといまで副社長してた・・・』
秘書『存じあげません』
山口『え、いや、おとといまで・・・』
秘書『過去にいた方は存じ上げません』
山口『そんな歴史上の人物みたいに言わなくても。ほら、おととい僕がクビにした・・・』
秘書『・・・あぁ、この会社の悪玉菌のようだった方ですか?』
山口『そんな言い方ないだろ!僕の親友だぞ!』
秘書『・・・し・ん・ゆ・う?』
山口『もういいよ!僕が届けに行くよ!!』
秘書『いってらっしゃいませ〜』
河野『やばい・・・』
横山『そうですね・・・』
マスター『うん・・・』
客『ほんと・・・、マスター、コーヒーまだですか?』
マスター『おっと、すみませんね〜。はい、どうぞ〜』
河野『忘れてたけど、マスターは社員じゃなかったんだ』
横山『・・・』
河野『どうする?これじゃ勝てねぇよ』
横山『そうですね・・・』
河野『はぁ〜・・・』
マスター『あらら、落ち込んじゃって・・・、大丈夫だよ。なんとかなるさ!』
河野『・・・』
マスター『・・・。じゃ、歌いま〜す』
河野『なんでだよ!』
マスター『サンド〜バッグにぃ〜』
河野『しかもあしたのジョーかよ!』
マスター『浮かんで〜消える〜』
河野『はぁ〜・・・』
横山『サンドバッグ・・・?サンド・・・バッグ・・・!そうだ!』
河野『なに?』
横山『新商品、いけるかも・・・!』
河野『なんだ?なにか思いついたのか?』
横山『はい、さっきマスターの歌で、サンドバッグってあったのを聞いておもったんですが、叩かれても壊れない・・・靴の場合だと、こう・・・足に負担のかからないような・・・!』
河野『おぉ、ってことは、ブランドにこだわるんじゃなく、性能にこだわると』
横山『そうです!まぁ言えば、オーソドックスな!』
河野『オーソドックス!よし!会社名にしよう!』
横山『なんかオーソックスと似てますね』
河野『うん、でもこっちは性能で戦う正統派だ!柄重視なんかに負けないぞ!』
横山『なんか、いけそうですね!』
河野『あぁ!これなら、オーソックスに勝てる気がする!』
マスター『あれ?金はどうすんの?』
横山『え?マスターが持ってるんじゃないの?』
マスター『・・・はっ!』
横山『・・・まさか』
河野『あ!いつの間にか喫茶店が綺麗になってる!』
マスター『!』
横山『だからさっきお客さんがいたのか!どうするんですか!!!』
マスター『私は知らん!!あの、あれだ!金が勝手に!!』
河野『しょうもない嘘つくな!金なかったら始まらないだろ!!』
横山『あー!!どうすりゃいいんだ!!』
カランカラン
マスター『あ、ちょっと待った!客だ〜♪』
横山『あ!逃げた!』
マスター『は、はい、いらっしゃい!』
山口『あの〜、こちらに河野君がいると聞いたんですが』
マスター『え、誰から?まぁいいや。あ、少々お待ちを!河野君〜、ちょっと!』
河野『なんだよ・・・、って山口!?何しに来た!?』
山口『うん、忘れてたから渡しにきた』
河野『何を?』
山口『退職金』
全員『!』
完
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