お昼の時間に友達に聞かれた。
「朱音って好きな人いるっけ?」
唐突な質問をされた事により、私は飲んでいたミルクティを吹き出しそうになり、それを堪えようとし咳き込んでしまった。
「…ケホっ、どうしたの、いきなりだね?」
「ふと、思っただけなんだけどね。私は…今まですっごく好きになった人も、なってくれた人も居ないかもなって。」
うーん、と今までの事を思い返しているこの子を見ていたら、ある後輩の姿が浮かんできた。
1つ下の、彼女の幼馴染み。
実は然り気無く知り合いだったり、彼を見掛けたりする機会が多いのだが彼の、この子を見つめる視線は温かい。
そして、優しい。
1度だけ聞いたことがあった。
気持ちを伝えようとは思わないの、と。
その時返ってきた答えに、私は何故か自分の事でもないのに切なくなった。
『気付いて貰えるなら、それは嬉しい。でも自分からは言うことはこの先ずっと、一生、あり得ない。』
『特別な感情がなければ、傍に居るのに、理由はいらないから。』
『傍に居るのに理由がいる関係は、理由が無くなったら離れなくちゃいけない。それなら、特別な感情なんていらない。』
『…近くにいられるならば、それでいい。』
その言った彼の表情は、本当に何でもない日常的な会話をしているみたいに普通だった。
それが余計に、切なかった。
「朱音?あーかーねー!話聞いてる〜?」
「ぅえ!?あー…、ごめんごめん;考え事してた。」
「も〜ぅちゃんと聞いててよねぇ?」
苦笑いしながら謝る私に、プーッと不満げな顏を向ける友達、姫乃。
姫乃が、『彼』の気持ちのベクトルに気付く日が、そして2人の気持ちのベクトルがおんなじになる時がくれば良いのになぁ〜。
…なんて。
思わずにはいられなかった。そんな、ある日の午後。
END.
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