刺すように鋭くて冷たい空気だった。鼻の奥がつんと痛む。隣を歩く背の高い彼の肩の向こうに星が見えた。
(さむい、)
そんな当たり前のことを当たり前のように考えて、無造作に指先を動かす。冷えたそこは、けれどまだ熱はある。ふと、彼のそれも温かいのだろうかと疑問が浮かんだ。
(…て、なに考えてんだっ)
無意識に視界に入れていた左手を見て、はっとする。右手が変な汗をかいた気がした。深く息を吸い込むと、冬の夜のにおいが肺を満たす。
(う、わ)
瞬間、ごう、と強い風が吹く。何もかも奪うような勢いのそれに首をすくめた。
顔を上げると、彼と目が合う。互いに声はなかったが均衡を破ったのは向こうだった。
「え、元希さ、」
右手を取られ、唇と唇が触れる。かさついた感触がやけにリアルでまばたきを忘れた。視界にあるのは子供みたいな笑顔。
「好き」
「も、元希さん」
そのまま手を引いて彼が歩くから、オレは、赤い顔を隠すこともできずに斜め後ろをついていくことしかできない。だけど彼の左手も温かくて、それがひどくうれしかった。
空をつかむひと
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