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「帰らないでよ。」
「帰らないで。」

ステレオで響いた双子の声に小さく笑った。

「城になんか帰らないで。」
「此処で暮らせば良いのに。」

口々に紡がれる彼らの子供染みた呼び止めに愚かだとは自分で重々承知しているが嬉しくなる。
また遊びに来るのが分からないのだろうか。
分かっているのに淋しがってくれているのなら彼らは普段の態度ほど大人ではないのかもしれない、そんな事も分からないというのならそれもまた年相応の子供のようだ。

「帰っちゃ嫌だよ。」
「ねえお姉さん。」

私は何て狡猾なのだろう、非情な彼らより私の方が余程に残酷だわ。
私は後ろで手を組んだ。
ねえ、君達は私が元の世界に帰る時もそう言って止めてくれるのかしら。
もしそうなのなら凄く凄く嬉しいと思うわ。
ほら、今のように悲しそうな顔をして見送ってくれるのならば。
また明日、そう言えば彼らはきっと不服そうに頬を膨らませながら笑うのだろう。
けれど、その表情に安心するのだ。不安に塗れた顔に安堵するなんて狂っている。

「じゃあね。」

不安げな顔は自分の価値を酷く端的に現してくれているようだ。
私は微笑んで彼らに手を振った。狡い狡いお姉さんを、君達は明日も引き止めてくれる。





踊れ、犠牲者


(また、なんて保証ないけど)(例えばそれは時の犠牲者)










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