[通常モード] [URL送信]






部屋に入ってきた山本は、つかつかと一直線に僕の机へ来た。ノックもなかったし、入っていいとも言ってない。けれど僕は奴の突然の襲来には慣れつつあるので(良くない傾向)、黙って書類の書き込みを続けた。


「‥‥なぁ、ひばり」

返事はしない。僕が仕事中なのは見て分かるはずだ。そんな事にも気付けない奴とは、話してやらない。
僕は今朝の校門での検査報告を書いていた。抜き打ちでやった結果は散々で、第2ボタンも、装飾品禁止も全然守られていなかった。
奴ら、ひょっとして並中を潰す気だろうか?だとしたら阻止しなくてはいけない。

「おもしろい話、持ってきたんだ。…‥」

横目が僕を見た。逸らしたら、忙しい僕の手を奴の手が止めた。こども体温。あたたかくて、大きい。
山本の目が、何だかゆらゆらしていた。溶けそうな、目つき。


「…引力ってさ、人間どうしにもはたらくんだって。‥知ってた?隕石引き寄せちゃうのとか、潮の満ち引きみたいなやつ。人間にも、あるんだって」

だからさ、と奴は続けた。第2ボタンまで開けて、ネクタイもしていないシャツから、あまい汗のにおいがした(制汗剤のにおいも混じっていた、かもしれない)。


「‥‥だから、世界の端と端にいても引っ張られることって、あると思うんだ」

山本の手が乗せられた僕の右手で、シャーペンが直立していた。ネクタイをしていなかった人数、13人。3が書きかけで止まっている。


こいつも、13人のうちの1人。でも。


「‥雲雀に引っ張られて来ちゃった」

授業中なのにね。
へらり、滲むように笑って奴は手を離した。書きかけの3は固まっている。
離れた瞬間のさみしさが、何だか恐ろしかった。(不覚!)
引力でもう1回引き寄せた。(否、シャーペンを捨てて右手で奴の腕を掴んだ)


「‥そこに居ろ」
不覚。けれど。


雲雀って意外とさみしがりな、と笑われたとき、ほんの少し恋を知った。





限りなく0に近い





HAPPY BIRTHDAY YAMAMOTO&HIBARI !!(4/24〜5/5)





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[グループ][ナビ]
[管理]

無料HPエムペ!