宮→須田
足元に目をやれば月光が黒い影を生み出し、俺の存在を現実のものと証明している。
自分の役割も立場も、とうの昔に気持ちには折り合いを着けたつもりだった。
妥協は出来ていたのに。
『宮田せんせー』
――その声を望みたくなってしまった。
君に出逢わなければ後悔することも自分ごと運命を呪うこともせずに済んだだろう。
現状を維持し、より深みへと嵌りながら日々罪を重ねて行けたはずだ。
例えその先に待つのが絶望だとろうとも、それさえも甘受して。
君にさえ、出逢わなければ。
月光
俺にお似合いの、細い光だと思った。
(君には到底似合わない光だ。)
。