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シンデレラ




ある所に、義母と義姉と義兄にいつも苛められ……



それはそれは大事に大事にされている少年がいました。
少年は煙突の中が楽しそうだと言う理由で暖炉の掃除を自ら毎日していたので、いつも灰まみれでした。

「ねえねえアレクちゃん!"灰かぶり"ってどこかの国の言葉でシンデレラって言うんですって!何だか可愛いわよね、シンデレラって呼んでいい?」
「ぜってーヤダ」
「えー可愛いのに…シンデレラちゃん」
「イ・ヤ・だ」

と、言う理由で普通にアレクと呼ばれていました。

ある日、お城でパーティが開かれる事になりました。
王子様のお嫁さん捜しも兼ねているとの事で、町中が大騒ぎ。

「パーティかぁ…美味い飯いっぱいありそうだなぁ…」

アレクは別の意味でワクワクしていました。

「アレクちゃんは行っちゃダメよ!」
「そうそう、王子に見初められちゃったらどうすんのさ」
「ああ、可愛いから絶対に危険だ」
「ご馳走があったら持って帰って来てあげるから」

義母のシスカ、義姉のマリカ、義兄のリウとジェイルはそう言ってアレクを置いてパーティに出かけてしまいました。

「あーあ…まあいいか、ご馳走持って帰ってくれるみたいだし」
「アーレク!遊ぼう!」
「お前が暇だって言うなら遊んでやってもいいぞ!」

皆がいなくなって暇を持て余していたアレクを誘いに来たのは、お友達のヨベルとロベルトでした。
普段は家族にガッチリガードされていてなかなかアレクに近付けないので、ここぞとばかりに近付いて来たのでした。

「おお!遊ぼうぜ!」
「ちょっと待ちたまえ!」
「「「おわぁっ!?」」」
「私は魔法使い!名はツァウベルン!…まあ、偽名だがね」

そこに突然現れたのは魔法使い?でした。

「アレク君、君をパーティに行かせてあげよう」
「いや、着飾るのとか嫌だから」
「さあ、ドレスだよ!」
「って聞けよ!」

ツァウベルンがキラキラした星がついた棒を振ると、アレクの見窄らしい服がふんわりとしたお姫様のようなドレスになりました。

「おわぁ!なんだこりゃ!」
「うわーアレク可愛い…」
「お、俺は可愛いなんて思って無いからな!」
「いやその前に俺、男なんですけど!?」

頬を赤らめている友達二人に突っ込みを入れているのも気にせずに魔法使いはキョロキョロと何かを探していました。

「ふむ…よし、そこのネズミ達」
「「誰がネズミだ!」」
「白馬になれ!」

ツァウベルンがまたステッキを振ると、ヨベルとロベルトが白馬になってしまいました。

「なっ!?」
「次は乗り物だな…あれでいいか」
「うわ!」

そこをたまたま通り掛かったシャバックがカボチャのような形の馬車にされてしまいました。

「何してんだよお前!」
「この魔法は深夜の12時を過ぎると消えてしまうからね」
「はぁ!?」
「最後に…これは私からの贈り物だよ」

ツァウベルンは懐から綺麗な硝子の靴を出すと、アレクの前に跪きました。
そしてアレクの足を手に取り硝子の靴を履かせます。

「ふむ、ピッタリだ…寝ている君の足を触ってサイズを確かめた甲斐がある」

アレクは背筋に薄ら寒い物を感じ、慌てて馬車に乗り込み逃げ出しました。
気付くと馬車は城まで走って来ていて、せっかくだからと思ったアレクはお城に入っていきました。

「うわ…!すげーごちそう!」

城に入ると着飾った沢山の人と沢山のご馳走がアレクの目に飛び込んで来ました。
一番奥には椅子に座って沢山の女性から婚姻を求められて苦笑しながら曖昧に返事をしている王子様がいましたが、 アレクはご馳走に夢中で気にしませんでした。

「うわーこれ美味いな」
「……あれは…」

夢中でご馳走を食べながら口の周りをベタベタにしているアレクを王子様が見つけて、その可愛らしさに一目惚れをしました。
王子様は沢山の女性が止める声も耳に入っていないのか立ち上がりアレクに向かって歩いていきます。

「はじめまして、お嬢さん」
「むぐ?」

お肉を口いっぱいに頬張りながら振り向いたアレクにクスリと笑って、ナプキンで口の周りを拭いてくれました。

「私はグントラムと言います、貴女は?」
「俺はアレク!…ん?あれ?グントラムって…ここの王子じゃねーか!」
「はい、よろしければ一緒に踊って頂きたいのですが…」
優雅な仕草でスッと手を差し出して来たグントラムにアレクはたじろぎます。

「お、俺…ダンスとか踊れねーし」
「私に任せて下さい」

にっこりと笑顔を向けられると、何だか大丈夫な気がしてアレクはいつの間にかグントラムの手を取っていました。
手を引かれてパーティ会場の中心に来ると、沢山の人が優雅にダンスをしています。

「ここに軽く手を置いて下さい…」
「うわぁ…」

グントラムの促す通りに動くと上手くリードしてくれているのか、ダンスとは無縁のアレクも優雅に踊っているように見えます。

「あれって…アレクちゃん…?」

その時、ご馳走を入れ物に詰めていたシスカがアレクに気がつきました。

「ダンスって結構楽しいんだな!」
「楽しんで頂けて嬉しいです」

微笑むグントラムを見て、アレクの胸が高鳴りました。
初めての感覚に首を傾げたアレクの目に12時が迫っている時計が映ります。

「ヤバッ!」
「アレク殿っ!?」

アレクはダンスの途中で慌てて走り出しました。

(魔法が解けるって言ってた…正体がバレるのはいいけど…真っ裸にでもなったら困るし!)

「待って下さい!」
「悪ィ!帰らねぇと!…あっ」

階段を駆け降りた時、硝子の靴が片方脱げてしまいました。
でも構ってはいられません、アレクは必死に走りました。

「………」

グントラムは硝子の靴を拾い、アレクが去って行った先をずっと見つめていました。

「あ、よかった…服は元に戻るだけか…」
「あ!アレク!」

城の外まで出ると、ロベルトとヨベルとシャバックが待っていました。

「お前らも元に戻ったのか」
「全く、何だったんだあれは…」
「ホントだよなー」

馬車も無いので、仕方なく皆で歩いて帰ると、先に家に帰っていて心配していたシスカ達に抱き付かれました。
(ロベルト達はアレクを連れ出したと思われて箒で叩かれました)


次の日、城からの使いが街にやってきました。
一件一件家を回っているようで、アレク達の家にもやってきました。

「失礼する。私は城の兵士のメルヴィスと言う。この硝子の靴を履ける人を探している」
「あ、あれ…!」
「シスカさん知ってるの?」
「実は昨日アレクちゃんが…」

・・・・・・・

「じゃあ、もしかしてあの靴を履けたらアレクが王子の嫁に…」

その時、皆の心は一つでした。

(アレクを取られてたまるか!!)

「わ、私が履くわ!」

まずシスカやマリカが履いてみますが、やはり合いません。
次にリウとジェイルが「君達は男だろう」と言われながらも履いてみましたが、やはりだめでした。

「こ、こうなったらジェイルちゃんの踵を切って…」
「アレクの為なら…」
「ま、待ってよ!」
「シスカさんもジェイルもやめてー!」

家の中は大騒ぎ、そこへまだ寝ていたアレクが起きてきてしまいました。

「なんだぁ…?騒がしいな…」
「君も男の子か…」
「あ、その靴…!」

硝子の靴を見つけたアレクが近寄って靴を履いてしまいます。

「やっぱりあの時落としたやつだ」
「あー!アレクちゃん!なんて事を…!」
「へ?」
「君、今すぐ城へ来てくれたまえ」
「は!?」

止めようとするシスカ達を尻目に、アレクは馬車に乗せられて城に連れて行かれました。

「ああ…!貴方は確かにあの時の…!」
「あ、王子だ」

城につくと、謁見の間の椅子に座っていたグントラムが走り寄って来ました。

「どうか、グントラムとお呼び下さい」
「えっと…グントラム?俺に何か用か?」

両手を握りながら見つめてくるグントラムに頬が赤く染まってしまうのが恥ずかしくてアレクは目を逸らしました。

「アレク殿、どうか…私の妃になって頂けませんか?」
「え…ええ!?」
「だめ…でしょうか…」
「いや、あの…俺、男だし…」
「そんな事は関係ありません、私は貴方の事を好きになってしまったのです」

グントラムは跪くと、アレクの手を取って甲にキスをしました。

「あ…ほ、本当に俺でいいのか…?」
「貴方でいいのではありません…貴方でなくてはならないのです」


―そして、数日後二人は無事結婚式を迎えました。

後に押しかけて来た年下の姑と義姉、義兄が城に住み着き、アレクと二人の時間をことごとく邪魔される事を王子様はまだ知りません。

それでも二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。






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