ラブポーション
「実はそれは惚れ薬なのだよ」
私があげたジュースをアレク君が飲み干してから告げた。
「私の事を好きになる薬を入れておいたんだ」
「な、何してやがんだ!!」
殴りかかってきた拳をひょいとかわして、にっこりと微笑みを向けると『血ィ吐くまでブチ食らわすぞ!』と叫んで走って逃げてしまった。
「さて…どうなるか楽しみだな」
その後、事あるごとに彼の視線を感じる。
私が目を向けるとすぐに逸らしてしまうが…。
「アレク君、私に何か用かね?」
「な、何でもねぇ!!」
隙を見て近付いてみるものの、顔を真っ赤にして走って逃げてしまった。
余りの可愛さに顔のニヤけが止まらなくて口許を隠して必死に絶える。
たまたま通り掛かったオータ君が青い顔をして逃げてしまった。
夜、そろそろ寝ようかと部屋のベッドで寛いでいたら、ドアが勢い良く開け放たれた。
「おや、アレク君…どうしたのかな?」
「お、お前のせいだ!」
「何が…」
「あの薬のせいで、お前の事ばっか気になって……!」
「……アレク君」
「な、なんだよ…」
真っ赤になりながら睨んで来るアレク君に思わずクスクスと笑ってしまい
ながら見つめる。
「おいで」
「……〜っ!」
ベッドの縁に腰掛ける形で座って両手を広げると、素直に近付いて来た彼を抱き上げて、足を跨がせて向かい合わせに膝に座らせた。
「私を好きになってしまったのだろう?」
「……う」
身長差のせいで上目使いになっている彼はもじもじしながら目を彷徨わせていて、普段の彼からは想像も付かない程大人しい。
("薬"のせい、なのだろうけれど…)
「どうなんだい…?」
「……す…好き…」
「そうか……私は好きでは無いがね」
「な…なんだよそれ…っん!」
泣きそうな彼の唇に自分のそれを重ねる。
驚いて固まっている唇を舌で割り、歯列をなぞり、舌を絡め合わせると、震えながら私の服を握り締めてくるのがわかって強く抱き寄せながら唇を離した。
「なん、で……好きじゃないなら…なんで…」
ポロポロと涙を零して見つめてくる彼の頬を撫でながら、横目で日付が変わった事を確認する。
「嘘だよ」
「え…?」
「全部、ウソ」
言いながら頬を伝う涙を舐めとる。
「あのジュースは薬なんて入っていないただのジュースだったし、好きではないと言ったのも嘘だ」
「な……なん…なん…」
口をぱくぱくさせて赤くなったり青くなったりしているのも可愛い。
「じゃあ…俺…だまされて…」
「ああ、でも私を好きになったのは君の意思だよ」
「え…っ」
「惚れ薬なんて、入っていなかったんだからね、きっと君は元々私の事を好きだったのだよ」
満面の笑顔を向けてあげると、益々赤くなった顔を隠すように胸に顔を埋めて来る
「あ、でも怒ってはいけないよ?昨日は嘘をついてもいい日だったのだから」
「…?」
「エイプリルフールと言うのだよ、知らなかったかな?」
「…それ、嘘?」
「いや?エイプリルフールは終わったからね、嘘は付かないよ」
頭を撫でてあげながら耳元で「愛しているよ」と囁くと、ますます耳を真っ赤に染めて小さくなる身体が愛しくて…
「これで晴れて恋人同士だね、アレク君」
「お前って…ほんとバカ…」
「こんなに可愛い恋人が出来たんだ。バカと言われても一向に構わないよ」
抱き締めたまま体制を変えてベッドに押し付けると驚いた彼の瞳が揺れる。
「何して…」
「私は足が早いが…手も早いのだよ、アレク君」
私がにっこりと笑ったのと彼の悲鳴が城内に響き渡ったのは、ほぼ同時だった。
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