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愛情を貴方に



「私は貴方より先に死んでしまうのでしょうね」

つい2、3日前に想いを伝え合った相手の部屋でベッドに寝転んでゴロゴロしていたアレクは、突然の言葉に相手を見上げたまま固まった

椅子に座って小難しそうな本を読んでいた相手、ルバイスは本を畳むとアレクに視線を向ける

「な、何言い出すんだよ!急に!…っいて!!」

ガバッと立ち上がったアレクは勢い余ってベッドから勢い良く落ちた

「おや、大丈夫ですか?」
「だ、大丈……わっ」

ルバイスは立ち上がり床に落ちたアレクを俗に言うお姫様抱っこで抱き上げると椅子に座り直す

「こうしていると親子のようですね」
「親子って言うな…!じゃなくて、何でいきなりあんな事…おっさんが危なくなったら俺、ちゃんと助けるし…」

非難するように自分を見つめてくるアレクに苦笑を浮かべながら頭を撫でる

「戦争とか…そう言う事では無くて…私はね、貴方の3倍は生きてるんですよ」
「え…?」
「どんなに抗おうとしても、老いには勝てないのですよ…貴方はまだ若いから、そんな事考えもしないんでしょうけれど…」
「……そ…そんなの…」

今の自分では想像する事も無かった"老い"と言う物はアレクにはやはり理解出来なくて目を泳がせる

「すみません、困らせてしまいましたね…」
「そんな事、ねーけど…」

理解出来ないまま、自分よりも先に相手を連れて行ってしまうであろう"それ"を"恐怖"として感じたのかアレクはルバイスの服をぎゅっと握り締めた

「…泣いてしまいましたか?」
「なっ!泣いてねーよ!」
「それはよかった」

頭を撫でながら笑みを浮かべてルバイスは続ける

「これから先、どれだけ一緒に居られるか分かりませんが……私が先に逝ってしまっても…」
「また、そんな事…っ」
「悲しまずに笑って居て下さい」

アレクの言葉を遮る様に、どうかお願いですと言ってルバイスは続ける

「そんな…の…」
「貴方が…私に出会えて幸せだったと思えるように惜しみ無く、全ての愛を注ぎますから」
「……おっさん…」

恐怖と、悲しみと、幸せを同時に与えられて複雑な気分になって顔を歪めたアレクは、抱き上げてベッドに寝かされてハッとする

「では…さっそく私の愛情、沢山受け取って下さいね」
「……おっさん…これって作戦…?」

帽子をベッド脇の棚に置き、アレクの服に手を掛けるルバイスに抵抗する気にもなれないまま顔を真っ赤にするアレクの唇に

「さあ?どうでしょう」

いつものように飄々とした態度に戻ったルバイスの唇が重なった








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