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可愛いわんこ



「わんっ!」

暇を持て余して城の中をブラブラと歩き回っていたロベルトは後ろから聞こえた犬の鳴き声に振り返る

と…

犬のようなふわふわした耳に犬のようなふわふわした尻尾のついた…アレク…?

「なっ…!おま…っ!?なに…っ!?」

ロベルトの膝程度までの身長しか無い…恐らくアレクであろう子犬はロベルトの足に抱き付いて来て尻尾をぱたぱたと振りながら見上げて来る

か、可愛い…!

なんて思わず思ってしまったロベルトはその子犬を抱き上げるとペロペロと頬を舐められて、茹でたてのタコのように真っ赤になって固まってしまった

「おい、今ここにアレクが……あ」

アレクを探しに来たらしいジェイルも、固まっているロベルトの頬を舐め続けているアレクを見て一瞬固まった

が、次の瞬間、光の早さでロベルトからアレクを引きはがした

「くぅん…」
「ダメだ、バイキンが伝染る」
「っ!誰がバイキンだ!!」
きゅんきゅん鳴きながらジェイルの腕の中で暴れるアレクに、我に返ったロベルトが手を伸ばすとイソイソとロベルトの腕の中に移動するアレク

その後、物凄い形相で睨まれながらロベルトが知らされた事

何だかよく分からない敵に遭遇し、何だかよく分からない術を掛けられて、気がついたらアレクがこうなっていた

と、何ともよく分からない説明をされた

後からやって来たリウとマリカに『懐いてるんだからロベルトに任せて俺たちは元に戻す方法を探そう』と諭されたジェイルが納得するのはそれから1時間後だった

その後、すりすりと胸に擦り寄っているアレクを抱き締めたまま部屋に戻ったロベルトはベッドに座ると、腰に下げていた袋からパンを取り出した

「お前、これの匂いに釣られてたんだろう」
「わんっ!」

パンを出された途端に目を輝かせてパンに齧り付く様子を眺めて目を細めて笑いながら、ロベルトはパンを持っていて良かったと心の底から思った

「ふぁ…」
「眠くなったのか?…食ったら寝るって…本当に子犬だな…」
「きゅん…」
「な…抱っこか?し…しょーがねーな!」

しょうがないと言いながらも満面の笑みを浮かべながらアレクを抱き締めながらベッドに寝転び、そのまま眠ってしまった


「おい…」
「ん……」
「なぁ、ロベルト」
「んぁ…?」

名前を呼ばれて目を開けると、子犬…では無い普通のアレクがそこに居た
頭の中が真っ白になって固まったまま自分を凝視しているロベルトに怪訝そうに眉を潜め見つめ返すアレク

「離してくれよ?」
「はっ…!どわあぁあっ!!」

言われて初めて自分がガッチリとアレクを抱き締めている事に気付いたロベルトは大声を上げながら手を離して後退り、壁にドンッとぶつかる

「何で俺、ロベルトと寝てんだ…?」
「なっ……!」

ムクリと起き上がったアレクは裸だった
どうやら子犬になった時、一緒に小さくなった服は元には戻らずに破けてしまったらしい

盛大に鼻血を噴出したロベルトはベッドの白いシーツを赤く染めながら俯せに倒れた

「ロベルト!?大丈夫か!?誰かいるか!?ロベルトが!」
「ま……待…て……」

ロベルトの鼻血の量に驚いたアレクは急いで誰かを呼びに部屋から飛び出して行った

……裸のまま


「その格好で…ガクリ」

ベッドに突っ伏したまま止めようとしたロベルトが伸ばした手は宙を掴み、そのまま力尽きた

数人の叫び声が城の中に響き渡り、アレクが通った跡に(鼻)血溜まりに倒れている人々を回収する為にザフラーとユーニスが城中を忙しなく動き回っていた


ロベルトが回収されたのは少し時間が経ってからで、頭に大きなタンコブを三つ見つけてユーニスは不思議そうに首を傾げてたのだが

シトロ村の三人は

「ベッドから落ちたんじゃないかな?」

と、お互いに幼馴染みの犯行の隠蔽に助力しておく事にした



幼馴染み達みんなでロベルトを一発づつ殴った事は秘密

だって本当は俺(私)だって子犬のあのアレクと遊びたかったのに








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