距離
貴方を閣下と呼ぶのは
貴方との距離を保つ為
これ以上、私の心が貴方を求める事の無い様に
私の心が、貴方の心に入り込もうとしない様に…
「はい、閣下。お供します。」
「んじゃ、行くか!」
閣下に呼ばれファラモン城からアーリア城に赴くと早速、閣下が先導して歩き始める。
「あの、閣下?」
「ん?」
閣下はチラリとだけ振り返り、また前を向いて城の出口に向かって行く。
「今回のお供は私だけですか?」
「ああ、ちょっと出掛けるだけだし、モンスターももさもさ位しか出てこねー場所だからな」
「はぁ…何かのご用事ですか?念の為にもっと強い方に護衛をして頂いた方が…」
確かに私も戦闘が出来ない訳では無いけれど、もし協会の手の者に遭遇でもすれば、私程度の力では閣下を守り切れないかもしれない。
「……息抜きの散歩だから、そんなにゾロゾロ連れて行きたくねーんだよ。グントラムが嫌なら他の奴連れてくけど」
「ま、まさか!嫌なんてそんな…!」
そんな訳が無い
貴方と二人きりだと言うだけで、こんなにも胸が苦しいと言うのに…。
「行きましょう!閣下の事は私が命を掛けてお守り
します!」
「いや、そんな覚悟いらねーから」
突然やる気を出して辺りを警戒しながら守る様にして歩き出すと、閣下が呆れた様に言って笑い出す。
屈託の無い、少年そのものの笑顔。
私よりもずっと強いのに、私よりもずっと幼く、とても細くて可愛らしくて……
閣下……
「じゃあ、行こうぜ!」
閣下………
「……どした?」
「………私は、貴方の事が…」
「ん?」
好きです…愛しています。
貴方に触れたい、抱き締めたい…。
「……っ」
「…?…大丈夫か?」
喉の奥に刺さったままの刺は、決して抜ける事は無く、鋭い痛みで私を苦しめる
「…貴方の…事を…」
「閣下の事を、お守りします」
にっこりと、いつものように笑う私を、一瞬不思議そうに見るも、すぐに笑顔を向けてくれる。
永遠に手の届く事の無い
愛しい人
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