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》また会う日まで


仕事から帰ってきたら、ヤエの荷物がなくなっていた。
服も下着も生活用品も。

いつかこんな日が来るとわかっていた。
昨日気づいた。

ヤエは僕が思ってる以上に強い子だった。
自分の強さに気づいていなかっただけで、ずっとずっと強い子だった。


昨日、初めてふたりで布団に入った。
そして彼女は、愛してると震えた声で呟いた。
僕は答えないで寝たふりをした。

僕もヤエを愛していた。
だけど失ってしまう。
そう思うとおかしく思って、
こんな年で高校生を愛してしまうなんて。
親として、男として、友人として。
僕はいろんな意味でヤエを愛していた。


朝起きてふたりで、朝ご飯を作った。
ご飯のあとに甘い牛乳の入ったコーヒーを飲んだ。
僕が仕事に行こうとすると、ヤエが玄関まで送り出してくれた。

僕が死なないのかと問うと、ヤエは何かスッキリしたような顔で、死なないわ、と言った。
そして背伸びをして僕の唇にキスをした。

最後まで僕はヤエに手を出さないと決めていたのに。
不意打ちだった。
いってらっしゃいとヤエが微笑む。

僕は大したもんだと舌をまいた。
ヤエは最後まで本名を明かさずに、ヤエで突き通した。



そうだ。
僕は彼女のいなくなった部屋で煙草を吸った。
美味しくもなけりゃまずくもない。
なんでこんなものを嗜好しているのだろう。


静かな部屋で声をあげて笑った。
虚しいだけで、何もなかった。



縁があればまた会える。
縁がなければもう会えない。


だってヤエは僕の家の合い鍵を持っている。
僕は当分ひとりぼっちだ。


ヤエ、きっとまた会える。


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