[携帯モード] [URL送信]
》並々ならぬ


あたしは帰りたくありません、それに杉田さんはあたしの親に挨拶する意義もありません。

杉田さんは口角をあげて、いつものように自嘲するように笑った。
なぜだい、今の君の保護者は僕だ。
違う、あなたは保護者なんかじゃない。

杉田さんはま、いいけどなと呟き、窓際に立った。
この人ほど、窓際が似合う人はいないと思った。
特に意味はないけれど、そう思った。
あたしは杉田さんの隣に立つと、窓に手を当てた。
窓は冷たい。

杉田さん。
何?
この世に幸せな人と不幸せな人と、どちらが多いと思います?

そりゃ不幸せな人が多いだろうな。欲張りなんだよ、みんな。自分は不幸せだと思い込んで、自分が世界で一番不幸だと、人の幸せを羨んでいる。僕は不幸せだと思ってるよ、、自分のことは。君は?

もちろん不幸せだと思っています。自分はナイーブだと思う。

杉田さんはあたしの頭に手を置くと、怖がらなくていいと言った。
杉田さんが手を挙げた時に思わず体に力が入って目を閉じたことに気づいたのだろう。
あたしは杉田さんを見上げると、あたしの不幸話を聞いてくれますか?と問う。
彼は頷くと、僕の話も聞いてくれるか、とタバコに手を伸ばし、私の返事を待たずにどうぞと言った。
その行動は私を拒否しているように思えて、少し黙ってしまった。
そんな様子のあたしがわかったのか、杉田さんはははと笑うと、吸うかとタバコの箱を出した。

あたしの家の話です。
ぎちちが家に来たのは半年前なんです。
母は幸せそうにしてました。
好きな男性と一緒に暮らせるんですもん。
だけどしばらくたってから、母は帰って来なくなった
新しい男を作ったのかと思いました。
あたしは母を恨んだ。
姉は大学生であたしは高校生。
年頃の女の子が見知らぬ男性と一緒に暮らすにはもちろん抵抗がありました。

ある日あたしは学校を早退しました。
熱が出て、帰った。
家のドアをあけてびっくりしました。
大学に行ったはずの姉の靴とぎちちの靴が置いてあったの。
あたしは体が痛くて、とにかく早くベッドに入りたくて
靴を脱ごうとしたら、姉のあえぎ声と荒い息づかいが聞こえてきた。
不信に思ってリビングに行こうとノブに手をかけて、そしたら見えちゃったの。
ドアにはガラスがはまっていて中が見えた。
姉とぎちちがセックスをしていたんです。
あたしは後ずさりして家を飛び出した。
そしたら母に会ったの。
こんな偶然。

母は言ったわ。
あんなやつら死ねばいいって。
あたしはしばらくして家に帰った。

その週の日曜日。
ぎちちとふたりきりになった。
あたしは熱が下がらなくて寝ていたの。
そしたらぎちちがドアをノックもせずに入ってきて
あたしにこう言った。
ヤエはセックスをしたことがあるかって。
あたしはなんだこの人と思って頭に血が上った。

するといきなりぎちちはあたしを抱きしめて、初めて君を見てからずっとセックスしたいと思っていたんだ、僕のここの高まりをおさえてくれよ、って。
あたしの手をとってふくらみに添えたの。
あたしが手を振りほどくとあたしを押し倒し、胸を揉み、嫌がるとあたしの頬を叩きつけ押さえつけて、首筋を舐めてきて。
悪寒がした。
気持ち悪かった。
あたしはぎちちを蹴り上げるとパジャマのまま家を飛び出した。
とっさに携帯を持って出てきたから母に急いで電話して、されたことを泣きながら伝えた。
そしたら母はまた死ねばいいのにって言った。
あたしは夜になるとこっそり部屋に戻り、家出準備を始めた。

それ以来家に帰るのは夜中。
ぎちちに会いたくなくて。
姉にも母にも。

そんな夜に杉田さんに会ったのよ。

あたしは杉田さんの手を取ると見上げ、笑った。
杉田さんはあたしの頭を再度撫でると、辛かったんだね、と言った。
あたしは涙を流していた。


あきゅろす。
[グループ][ナビ]
[HPリング]
[管理]

無料HPエムペ!