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》突然やってくる



今日で杉田さんに出会ったの2ヶ月目ですね
そう言うと杉田さんは良く覚えてるなぁ、と彼独特の自嘲するような笑い方であたしの頭をポンと叩いた。


あたしたちは今日も窓際で煙草をふかしていた。
あたしはというと、煙草にも慣れてきて、
最初のようにむせることもなく、足元がふらつくようなこともなくなっていて。
杉田さんとふたりで煙草を窓際で吸うのが日課となっていた。

学校に久しぶりに行くと、担任に単位が足りない、と言われた。
補講をしようが単位は埋まらない。
ということは、留年決定。
それがわかってから学校にも行かず、杉田さんの部屋に入り浸っていた。
学校なんか行きたくない。
あたしがそう呟くと、杉田さんはじゃぁ行かなくて良いと、あたしに煙草を1本差し出す。
これで逃げれると思うならどうぞ。
その言葉は意地悪で、私は煙草を受け取らずにはいられなかった。


そんな生活から1ヶ月。
気づいたら出会ってから2ヶ月の日々が過ぎていた。
あたしは家に帰っていない。
姉からのメールだと母も帰っていないらしい。

杉田さん…
なに?
あたしを抱いて。

少しの無言の後、杉田さんは鼻で笑う。
煙草臭い口とキスをするのか?

あたしは自棄糞になっていたのかもしれない。
それでも、と声を荒げた。
抱いてください。

杉田さんの視線が痛い。
無言の間、杉田さんはあたしの反応を待つように煙草の煙を吐いた。

いやなんです、もう。あたし、どうすればいいか。

死ぬのか?
杉田さんはやっと口を開いたと思ったら、もう一度、死にたいのか?と繰り返した。
あたしはいいえ、死にたくないんですと煙草の火を消すと杉田さんの胸の中に体当たりするように自分の体を埋めた。
どうしたらいいのか、あたしにはわからないんです。

今日、姉からメールが来たんです。
そろそろ帰ってきて。
私たち家族をひとつにしましょう。
みんな心配しているから。
そう書いてあったんです。
誰も心配してないくせに、あたしのことなんかどうでもいいのに。

涙が溢れてくる。
杉田さんの匂いが鼻腔をくすぐる。

ここにいればいい。
僕がそばにいるから。
杉田さんはあたしの背中に手を回して抱きしめてくれる。

嘘でもいい。同情でもいい。
この温もりがあたしを包んでくれる。
あたしも杉田さんの背中に手を回して抱きしめる。
もううんざりだ、こんな世界。
あたしは不幸のど真ん中にいる。
杉田さんはそれを求めている。
きっと杉田さんは煙草ででも逃げれなかったのかもしれない。
杉田さんはあたしが死にたいと言うのを待っている。
あたしは絶対に死にたいなんか言わないと心に決めた。



あきゅろす。
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