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パパとママが泣いていた。私の机を見下ろして、手を机に置いて、泣いていた。
机の上にはナイフとぼろぼろになったクマの縫いぐるみの残骸。引きちぎられた目と切られた手足、腹を裂かれて飛び出した白い綿。茶色の顔にはナイフで何度も刺した跡。クマのぬいぐるみは、無惨な姿で横たわっていた。愛らしい面影などどこにもない。
私は部屋の隅で丸くなって、パパとママを呆然と見ていた。なんで泣いているのかがわからなくて、私は足を抱え込んで、二人を見ていた。私は何も、パパとママを泣かせるようなことはしていない。
「どうして…」
こんなことになったの、とでも言いた気にママは机の上にあったナイフを手に取りパパを見上げた。
「どうして」
パパは力無く首を振りうなだれたまま、「どうして」とママを見下ろした。
「私のせいだっていうの?この子がこんなことしたのは私のせいだって言うの?」
「誰も、そんなこと言ってない」
「そう思ってるんでしょ?もう嫌よ、この子と一緒にいるのは」
パパがママの頬を叩いた。叩かれた衝動でママの手からナイフが二人の足の間に落ちた。ママは頬を押さえて、パパを睨みつける。
「あなたは知らないでしょ。この子これが初めてじゃないの、もう六回目よ。何回言い聞かせてもこれなの、もう嫌よ。嫌、嫌嫌嫌嫌……」
ママは嫌嫌嫌と繰り返し声を上げて泣き始め、その場に足をついた。パパは無言でママを見下ろし拳を握り締めていて、私は部屋の隅に丸まって、二人の様子を眺めている。
いつまでこの時間が続くのか。私は退屈でしょうがなかった。お絵描きもしたかったし、アニメも見たい。早くぬいぐるみの残骸を処理して、遊びたかった。
パパは知らない。ママはこの頃よくヒステリックに叫ぶようになって、こんなふうに泣いている。私を叩くし、私に汚い言葉を吐き出したり、自分のしたことさえも覚えていない。そのことをパパは知らない。だけど私は知っている。
その時玄関のチャイムが鳴った。パパと私は玄関に目をやる。パパは私を見てママを見ると、複雑な顔を浮かべて、玄関に向かった。
私もパパの後について行こうとママの横を通ろうとした時、ママに腕を引かれ、その場に座り込む。ママは私の顔を強く掴んだ。ママの顔はいつものみたいに鬼のようで恐かった。
「パパに余計なこと言うなよ」
私は頷き、パパの後を追い掛ける。背中からママの啜り泣きが追って聞こえた。






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