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―手を伸ばせば届く君へ―






確かに晴れた夜の空に浮かぶ月。


「また来たんですか?」
月の光に照らされたその影が誰のものかなんて見なくても分かる。



「いけなかったのかい?」
「いいわけないでしょう」
もう何度繰り返しただろうこの会話。夜な夜なやってきては会話を交わす。
以前、あまりにも彼がよくくるので、貴方には御友達がいないんですかと尋ねると、君に言われたくないよ…なんていわれてしまった。

確かにそうですけれど。


「こうも毎晩来られては、私の肌があれてしまいますよ」
「君は毎日剥けかわるじゃないか」

「アハハ、ばれましたか」

そういって私は笑う。

毎日がそんな繰り返しなのだ。



それでも、こうも睡眠時間が削られてしまうと、たまに思考回路がおかしくなってしまう。例えば、毎日死に物狂いで過ごしているこの日々に意味はあるのかとか、干からびてはまた生まれ、干からびてはまた生まれるこの体など滅びてしまえばいいのに、とか。



「ねぇ、私に生きている価値はあるんでしょうか」

「…あるんじゃない?帝天がそう望んだんだ」

いかにもどうでもいいという様に答える梵天に、私は更に言葉を続けた。

「でも妖退治も真朱の世話もまともに出来ていないのに、私に銀朱という名が与えられたままなのは何故なんですかね」

もう頭のなかがおかしくって、こんなところに閉じ込められているならば結界のそとで妖にでも殺される方がいいと思ってしまった。
もしその妖が『彼』だとしたら尚更。




「ねぇ梵天、…もし私がいなくなったら、貴方どうします?」


「…はぁ?あんた、何を考えてるんだい」

「きっと、貴方が思うとおりのことです」

「…!………」

彼は、目見開いて訝しげに私を見たかと思えば、眉をよせその整った顔を歪ませた。




「…つまり俺に、殺してくれ…と」


「よく分かりましたね」
流石ですね、と言ったら彼は私を睨んだ。


「お断りだね」
その彼の目から、私のことを思っていてくれているのだと、ひしひしと伝わってくる。


「…もし君が消えてしまったとして、そうしたら俺は何をしてどうやって生きて行けばいい?」

「……梵天」

その言葉だけで、今まで悩んでいた全てのことが吹き飛んでしまった。日々の悩みや、死にたいという願望さえ、彼がいればいいという思いとすりかわってしまった。




「…それでも死にたいんなら今ここで俺が君の首を絞めてあげてもいいんだけど」

「…ありがとうございます。嬉しいです、でもお断りします」

そういうと、なんだい勝手な奴だねぇと言われたけれど、どうせ死ぬならもっと楽な方法がいいですと言っておいた。



「……ま、俺もまだまだ君にしたいことがいっぱいあるしね」
そういって口先をあげた彼にあまりいい予感がしない。膝に掛けていた毛布をギュッと握った。

案の定バサッと音がしたかと思えば、仕事部屋からでて襖に持たれかかっていた私の目の前に彼の顔。

「な、なんですかっ…」
「黙りなよ」


目も合わせられないほどの至近距離に心臓がいきなり活発にうごきだす。
近付いてくる彼の顔。




強く目を瞑った。













「今日は帰るよ」
だんだんと明るくなってきた空。
そういった彼の顔を見ることが出来ず、そっぽを向いた状態で返事をする。

「さよなら、もう来ないで下さい」

「そういってても、もし今晩俺が来なかったら君は淋しいだろう?」

「そんなことないですっ…失礼なことを!」


「ふぅん……まぁもし俺が暇ならまた来てあげるよ」

「……!」










(くやしいですが、私の惨敗みたいです)


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うふふ、喋り方分からない(^^


あきゅろす。
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