―君を、半分―
「ねぇ、梵天」
「なに?」
「半分こ、しませんか」
そう言われて渡されたのは、パピコのチョコ味。蒸し暑いこの校舎の教室に一人、ぼんやり座っていた俺を現実につれもどしたのは頬に当てられた冷たい物体。
「なんか、高校生にまでなって、これ食べるって」
どうなの?といったら彼は笑って、いいじゃないですかー…って。
「これ食べたら、昔小さかった頃を思い出すような気がしません?…まぁ別に昔にこれをよく食べたとかいう訳ではないんですけれど」
そういって笑う君を見ながら、軟らかくなってきたソレを口に含む。
銀朱のその言葉で思い出したのは、彼と初めて話した暑い夏の日だった。
…別にアイスを食べていた訳でもないけど。
「そうだね、若い頃を思い出すね」
「若い頃…って貴方、まだ若いでしょう」
他愛もない話をしながら俺の机の前の席のイスを俺のところによせて、向かいあってふたりきり。
エアコンなどついていない蒸された教室で、このアイスがなかったら俺の頭もおかしくなっていたかも。
そんなことを考えてる間に手元のアイスはどんどん溶けて、殆ど液状に近くなってしまったので喉に流し込んでしまった。
しかし、溶けてしまったそれは、さっきよりも量少なくなってしまったような気がする。
「俺、これだけじゃ足りないんだけど」
「残念、私もうたべちゃいました」
食べ終わって、カラになった変な形のゴミを袋にもどす彼。
「ねぇ、銀朱。もう一個買ってきてよ」
断られることは百も承知で、それでも聞く訳は、
「や、ですー。自分で行って来て下さいよ、手数料に1000円ほどくれるなら別ですけど」
そんなぼったくり業者に頼むわけないだろう、と呟いて、それからいいことを思いつく。
「じゃあ代わりに、君の心を分けてくれたらいい」
「…はい?」
「君の心、半分俺にくれたら、」
そしたら明日にでも、今日の分のアイスと俺の愛を目一杯詰め込んで返してあげるよ。
お手頃だろう?…俺がそう言うと君は、
「バカじゃないんですか」
と言って笑った。
(俺が君に惚れた訳は、確かに君の笑顔だったんだけど)
■□■□■□■■□■□■□短い(^^
未だに梵天の喋り方が掴めません/(.^.)\
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