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「ちょっ……、梵天これ、半分持ってくださ…!!」


「…ちょっとそれ、抱えすぎじゃないの?」









   ―君とバイト―








ここは駅前のビデオレンタル店。一週間前からここでバイトを始めました。

そして今何をしているかというと、返却されたビデオやDVDを棚に返そうと思い両手で抱えられるだけの量を抱えて、自分の背より少し上まで積んだせいで視界があまりなく、よたよたと棚付近をふらついていて。

ちょっと持ってきすぎたかも知れないなとは思いはしたけれど床に置く訳にもいかず、少し向こうで仕事をサボっている彼に助けを求める。





「お疲れ様、大変そうだねぇ」



「ちょ……そんなとこで優雅に見てないで半分くらい持って下さいよっ…」


「はぁ?なんで君の仕事を俺が半分も手伝わなきゃならないんだい?だいたい君が馬鹿みたいに持ってくるからいけないんだろう」

また憎たらしいことを。キッ、と睨んでやると、怠そうな顔をしながらもこっちへ向かってきた。

「あ、ちょ……っと、」



でも、駄目だ。やっぱりちょっと無理をし過ぎた、上に積んでいたものからグラグラしてきてふらついた拍子に後ろに倒れて尻餅をついてしまった。

「……っきゃ……!!!」



勿論抱えていたそれらは全て床に散らばって、物が床に散らばった音と自分の悲鳴に店内の視線が一気にこっちに集まった。



「銀朱!本当馬鹿だね、怪我は!?」



「な、いです…尻餅をついてしまっただけで…」


前にいた梵天が走ってきて、彼に助けて貰って立ち上る。
周りには無惨に散らばったビデオとDVD。ビデオはともかく、DVDはケースから本体が出てしまっているものもあって。

「これとこれはカウンターに戻って一旦拭き直しだね……」


「すみません…仕事、増やしてしまって……」



「…まぁ、俺はなにもしてないからちょっとくらいは手伝ってあげるよ」


此処では一応梵天の方が先輩という立場。彼は2ヶ月ほど此処で働いているらしいので、新人の私よりも仕事を早くこなす。
ちょっとだけ悔しいとは思いつつ、経験の差は仕方ないと思ったり。
隣でせっせと散らばったそれらを集める彼は場所の把握も完璧らしく、片っ端から商品を棚に戻してゆく。私には到底彼の三倍の時間がかかるため、かなり助かった。




「ちょっと、何してるんだい?いつまで床と仲良くしてるつもりなんだい、手伝ってやってるんだから君も動きなよ」


「わ、分かってます!」



彼の仕事ぶりに見とれていたなんて言ったら絶対笑われるから、言わない。まず、レンタルビデオ屋のバイトの仕事ぶりに見とれるって、我ながらよく分からないなぁ、と少し笑える。


「すみません、手伝います」



「いいよ今更。もうこの一本で終わりだから」



流石。
私がボーッとしている間に彼は、50はあっただろうものを殆ど直し終えてしまった。
そこに置いてるやつは一旦カウンターに置いてきて、と言われてとりあえず言われた通りに動いた。



「ある意味尊敬します」

「ある意味は余計だよ、素直に凄いねって言えばいいのに」


「自意識過剰って言葉、知ってます?」


「おや、聞いたことないねぇそれ日本語かい?」



やっぱり梵天はどこかにくたらしい。
私の精一杯の嫌味を軽く交わしてくる。
口では彼に勝てそうもないので、諦めて残りのCDでも直しておこうかと思ってカウンターに戻ろうとしたら、梵天に話しかけられた。



「……あ、そうだ銀朱」


「なんですか?」



「今日、家くる?」


「え、行っていいんですか?」



「質問を質問で返すのかい?」



「あ、い…行きます!」


わぁ。
彼の家に行くのなんて何週間ぶりだろう。
お互い忙しくって会うだけでもなかなか大変だった。このバイト先で会ったのはたまたまで、それ以来こうしてここで話せる機会が出来たけれど。
あぁ、楽しみだなぁと思ったのも束の間だった。






「どうせならなんか借りていかない?」


「なにか見たいものでもあるんですか?」


そういうと梵天は、ちょっとね…と言って奥の方から何か持ってきた。



「これだよ」


彼が見たいなんて珍しい。よっぽど面白いのかな、なんて思ってタイトルを見たら、


「じょ、し…こうせい…ご、う……か………!!」



あ、有り得ない!
タイトルからしておかしい。
これはもしかしなくても、





「これって、え、えー……!」



「AVだけど」



「なっ………!ば、馬鹿じゃないんですかこんなの見る訳、」


「君が見たいのあるのかって俺に聞いたんだろう?」




この人、最低。
せっかく久々に二人で過ごせる時に、こんなものをっ……!
だいたいこういうビデオはあっちの隔離コーナーに置いてあるべきでしょうっ……
まさか前もって用意していた、とか。





「なんて不細工な顔をしてるのさ」



「貴方、こーゆーのに興味があったんですか……」



「……まぁ、君の次の次くらいに」




「…!」


梵天がニヤニヤしてこっちを見ている。
ああ嫌だ!!
こんなビデオで女性の痴態なんて見て何が面白いんで、しょうか…

梵天は、こういう子が、好み?








「梵天」



「銀朱、……冗談だって、どうしたの」



私はよっぽど酷い顔をしていたんでしょうか。
梵天の顔が歪んだ。焦っているようにも見える。



「こういうの、見ないで下さいね?」



「え…うん、見ないけど、どうした訳」






「貴方が、やっぱり可愛い女の子の方がいいと思いそうで不安になります」




「………え…!!」


梵天の顔が微かに赤い。予想外だったのだろうか、彼には滅多に見られない間抜け面。


これで、仕返し。





「………なんて、冗談ですよ?あれ、梵天顔赤いですねぇ、どうかしました?」





「う、煩い……!君、性格悪くなったんじゃないの!?」


「さて、なんのことでしょう?」





可愛い。
彼を可愛いなんて思ったのは初めてかもしれない。
いつも私が遊ばれていて、いつか仕返ししてやろうと思っていたから。







「あと五分で上がりですよ、梵天」



「……っ、やっぱ今日は来るな…!」



「え…?そうですか……なら篠ノ女さんのところにでも遊びに行きますね」



「…………やっぱり来たら?」



「お邪魔します」


















(久しぶりに、清々しい気分ですねぇ)

■□■□■□■□■□■□■


あれ……?
甘甘じゃあないですねぇ……あれ…?

頑張って甘くらいですよね?

街様、ご期待に添えてなければスミマセン(><

言って下されば書き直しますので…!


リクエストありがとうございました、よろしければお持ち帰り下さい(^^


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