どうしてそこまで思い詰めたんだい
―何も映せぬ―
「……ん……」
「起きた?」
「貴方、何をして…」
「見て分からない?」
誰もが寝静まった夜中に、俺は寝床から抜け出して銀朱のもとへ。鳥居を通り抜けてが眠る部屋へと物音たてず飛び込んで、その体にのっかってやる。
勿論このまま寝かせておいてあげようなんてこれっぽっちも思っていなくて、ただ久しぶりに戯れあってみようかと思っただけ。徐々に体重をかけていって、目覚めた君の顔色を伺いたかっただけだったのに。
意外にも君は冷静で、真顔でとんでもないことを言ってくる。
「…ちょっと、手、お借りしますよ」
「………は?」
「私を殺しに来てくれたんでしょう?」
「そんな訳ないだろう……アンタ、どうしたの、遂にイカれた訳?」
「何のことですか?」
そう行って銀朱は、俺の両手を自分の首にかけ、その上から自分の手を重ねて、締め付けてくる。
「アンタ、何して…っ!」
「このぐらいしないと人間なんて死にませんよ」
そういいながらどんどん力を強めていく。
俺の手ごと自分の首を絞めている彼はまるで狂ったように無表情で。自らを窒息死させようかという彼の姿に寒気がする。違う、殺しにきた訳じゃないと言っても、彼の耳には届いていないようで。
「…放せっ……!」
そう叫んで無理矢理俺の手ごと彼のそれを彼の首から剥がすと、その首元にくっきりと赤い手形。こいつは一体なにを考えているんだと体に震えが走った。
「ケホッ…、もうちょっと、だったのに…」
「…なにがもうちょっとだ!!バカじゃないのかい!」
もう少しでアンタは本当に天に昇るとこだったんだよ何を考えているんだ、と叫んだ。
煩い巫女達が起き出すかもしれないとか、そういう考えは既に頭からスッポリ抜けていて、ただ一体今のは何だったんだと思うばかり。
「なんで殺してくれなかったんですか…ッ!そのつもりで私の上に馬乗りになって私を絞め殺そうとしていたんじゃないんですか……!?」
「違っ…俺はただ、」
「死にたい死にたい死にたい死にたい…っ、それなのに、誰も叶えてくれないんですっ………」
「………っ!」
「貴方なら優しく私を手にかけてくれると思ったんです」
このタイミングで、ただの夜這いだよなんて言えるはずがない。
しかも銀朱は狂ったかのように俺に歩み寄ってくる。
「ね、梵天………」
「…っアンタ、どうしちゃったのさ……」
キモチワルイ。こんなの俺が知ってる銀朱じゃない。
俺が知ってる彼はもっと明るくて元気で、憎たらしいほど可愛かったはずなのに、今向かいにいる彼は完全に己を見失っている哀れな人間。
良く見ると目の下は凄いクマで頬が少しこけていて、体も痩せたような気がする。
たった一月ほど見なかっただけで、こんなに変わるものなのかと思う。
…でも、一番変わったのは
「そんな目でっ……俺を、見るな…」
以前のような優しい瞳じゃなかった。
だからといって敵を見る目な訳でもない。
何も写していないような、暗く濁った瞳。
「…俺の好きだった銀朱は、あんたじゃないよ」
「………」
こう言ってもほら、今の君の瞳は、そこに涙を浮かべようともしないんだ。
(もう以前のように君と交わることはない)
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明様に捧げるリクエスト小説で御座います。
原作沿いでシリアス梵銀です(^^
リクエストありがとう御座いました…(´∀`)+゚!
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