あら
あらら
ここは何処でしょうか
―醒めない夢―
「銀朱さん!!」
「さようなら、六合さん」
そういって彼を見送ってからどのくらい経つだろう。
三日?いえ、もっと経ちましたっけ?
なんて考える。
本当は一刻も経っていないんでしょうけど、私は確かにこんなにも時間の経過を感じているのに。
確かにお腹は減らないけれど、自分なりの時間の感覚で朝食、昼食となんでも食べることが出来る。
…あ、なんでも出来るって言うのが夢なんでした。
ここには自分以外の誰も存在せず、自分だけの場所。
六合さんが此処に入ってこられたのは彼が『白紙の者』だからで、きっと他の誰もは此処には来やしない。
気付きはしないんでしょうに。
一人でお茶は寂しいなぁとは思いながらも、何もせずじっとしているのはこの上なく暇で、急須と湯呑みが欲しいと考えれば、今まで何も無かったはずのそこにそれらが現われる。
「本当に便利な所ですねぇ」
お茶を注ぎながら、自分が本当に望むものはでてくるのかと考えた。
私が望んだものは全て出てくる…饅頭やお茶、毬や花や虫まで。
そしたら、もし私が望んだもの全てが出てくるとしたら、
「…梵天」
貴方が出てきたり、……なぁんて。
きっとこの異空間に一人取り残された私を見て彼は、哀れだねなんて皮肉を言ってくるでしょうね。
「…やっぱやめ、今のは取り消しです」
本当に彼が出てくるかは分からない。
もしかしたら叶わないかもしれない。
「貴方には、まだまたしてほしいことがありますから」
私の、代わりに
それにこの場に梵天が現れたらきっと私はこの夢から一生醒めなくても良いと思ってしまうから。
彼と二人きりでずっといられる、なんて邪なことを考えてしまうに違いない。
少しだけ眠りにつきたいと願えば、目の前に布団。
のそのそとその中に潜り、心の奥でもう二度と目が覚めなければいいのにと、僅かな希望を胸にしまった。
(貴方と二人なら私は何もかもを捨てて)
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おわり
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