もう会えないと分かっていたなら、毎日でも会いに行ったのに。 ―足りないひとピース― 今日も俺はここで暇な時間を潰すんだ。 分かってるさ、もうあの頃のアンタはいないんだろう? 六合の言うことに嘘はないとは分かっているから。 「ここに何の用があるっていうんだ」 自分でも馬鹿だとは分かっているさ。こんなの俺らしくもない。 この森と社を隔てた狭間の向こう側からは、あの頃の足音なんて聞こえてこないのだから。 「いい加減出て来たらどうだい」 勿論返事なんてない。本当は気付いてる、 「おい、聞いてるの?」 「返事も出来ないのかい?哀れだね」 「…この俺を待たせるなんて良い根性だね」 「銀朱、」 「……銀朱っ…、!」 俺は一体何をしてるんだ。もう居ないんだって何度言い聞かせたらわかるんだ。 ここで声を枯らせて何になる。 ここに座り込んで誰を待っているんだ。 鳥居にもたれかかって、何を、 「……―銀朱」 せめて、もう一度だけでも…… 「会うことは、できないのかい」 ああ、女々しい。こんな俺は格好がつかないね。そう思って、今日は一旦引き返すことにした。 これ以上俺を傷つけたくないなら、早く来い。 「また来てやるよ、明日も明後日も、その次も」 「だから、たのむから」 消えないで。 (俺が泣くまえに、だきしめて) ■□■□■□■□■□■□■ BGMは一青窈のもらい泣き。 [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |