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暑いというのに末っ子はへばりつき、二男はなにやら鼻息荒く、理不尽極まりないことにアキラへ怒鳴り散らしている。
彼の黒一色の軍服には、なにやら白やら赤やらが飛び散っていた。
アイスか何かだろう。
先程まで末っ子が食べていたから。


「お前、ストレスたまってるんだな」
「私の服をこんなふうにした輩を差し出せば貴方を怒鳴ったりしないのですが」


そんなことを言っても、どうせ怒鳴るのだ。
昔はそういう子ではなかったのに。
思わずアキラは視線を彼方に向けて、かつての光景をしのんだ。
昔、まだ10にも満たなかったときは、末っ子と二男がべったりで、よくアキラは一人になっていた。
この二人は何をするのも一緒で、それこそこんなふうに暑い日は、二人仲良くアイスを食べるようなきょうだいだった。
自然と距離を置かれたアキラは木の下でぼんやり空ばかり見ていたものだ。
それがどうしてこうなったのか。


「…上司の悪影響か」
「今何かおっしゃいましたか」
「いや」


ゆるく首を振ったアキラは、嫌がる末っ子を無理やり突き出した。


「人でなし!アキラ酷い!」
「制服にべったりは感心しないぞ」


まだ末っ子は何かをわめいていたけれど、アキラは特に視線もくれず買い出しに行くため鞄を取った。
二男と末っ子は、賑やかに喧嘩をしている。
それを邪魔するのも何となく気が引けた。


暑さに頭をやられて、おぼつかない足取りのままどうにかこうにかたどり着いた自宅のドアを開けると、予想以上に冷たい空気が肌を刺した。
冷房の設定は何度になっているのだろうか。
これでは冷えすぎる。
リビングに入ると部屋中がまるで強盗にでもあったように荒れ放題となっていた。
喧嘩にしてもこれはひどい。
しかも冷房をつけっぱなしで、二人の姿はない。
どこへ消えたか。
恐らく部屋だろう。
咎める気にもなれず、アキラは冷房の温度だけ上げて、買い込んできたアイスを冷凍庫へ詰めた。
散らかったものを片付けて、念のために割れ物がないかも確認してから、とりあえず麦茶でも飲もうと息をついたその時、背後から人影がぶつかるようにしがみついてきた。


「アイス食うか?」


問いかけに、末っ子は答えない。
ただきつくしがみついて、少しばかり苦しかった。


「謝って、二人で食べて来い」


微かに末っ子はうなずいたように見えた。
アキラはその頭を撫でて、引きずるように歩く。
冷凍庫から買ってきたばかりの、彼らの好きなソーダ味のシャーベットを取り出して、渡した。
それを二つ持って、末っ子は二階へあがっていく。
アキラはその姿を見送り、やがて息をついた。
こういう時無性に電話をしたくなる。
机の上に置かれた携帯電話を視界の端に収めながら、逡巡している最中に、不意にドアが開いた。


「…アキラも食べよう?」


ひょっこり顔を出した末っ子は、そう言いながら彼らしくもなく遠慮がちに近づいてきた。
彼に二つ分渡したはずのアイスは、一つになっていた。


「一緒に来てよ」


きっと部屋に入れなかったのだろう。
そんな末っ子をしばし見ていたアキラは、ため息をついて笑った。
一人だけレモン味のシャーベット、それとスプーンを手に取る。
そういえば昔もよくこういう会話があった気がする。
そのたびに、こうして宥めたものだ。


「三人で食べるのもいいかもな」


問題は、一人だけ違う味を選択したことを二男が咎めないか、だろう。
末っ子は、ようやく笑った。















或いは



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19万打記念、家族パロディの話でした。
基本的に末っ子さんは長男にへばりつきつつ次男に手を出し、怒られるたびにへこんでそうです。それをみて次男も右往左往しながら謝れないし、結局長男がため息つきながら介入とかそんな感じではないでしょうか。
うさぎ様、少々次男と末っ子がいちゃいちゃしてますがお気に召したら幸いです。


リクエストありがとうございました!









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