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アキラには、本当に不本意ながら、あのトシマでの数週間にて色々なことを仕込まれた自覚がある。
恐らく普通に生きていたら覚える筈もなかった知識と技術だろう。
というより覚えたくもない。
絶対に。
しかしその数週間ののちはさしたる接触もなく、それきりシキが寝たので数年のブランクがあるはずなのだが体はしっかり覚えていた。
シキが起きてから数か月はすっかり常識がマヒしていたようで、何とも思わなかった。
恐らく感情が高ぶりすぎて何も考えられなかったのだろう。
それからさらに数年もたてば、冷静になるものだ。



「呆けるな」



逆にやってみろ、と言いたいところだが、そういえばシキは特別何の抵抗もなくしていた気がする。


何故シキはああも素早くできるのか。
何処で慣れたのか。


聞きたい疑問は山ほどあるけれど、どうせ今は言葉を発することは叶わない。
仕方なくアキラは言い返すこともなく黙々と、時折声を漏らしながら、それを咥えて舐る。
同時に耳に指先がふれた。
それだけで、少し体が跳ねる。



「いつまで経っても上達せんな」



頭上からシキの嘲笑が降ってきた。
したくない。
そもそもこれは素面でしたくない行為の筆頭なのだ。
酒に酔っているだとか、何らかの理由で思考が回らないならまだしも、こんな昼間から何が悲しくて技術向上を目指さなければならないのか。



「もういい」



その一言で、やっと口が解放された。
何度か肩で息をして、軽く咳き込む。



「…アンタ本当に勝手だよな」
「嫌なら続けるか?」
「誰が」



両手が後ろ手に拘束されたままでは立ち上がりにくいものである。
言われるままふらふら立ち上がると、何かが垂れて足を伝う不快な感覚があった。
確認しなくてもわかる。
それがまた悲しい。



「跨げ」



言われるまま、足を広げてシキの太ももに乗る。
跨げと言ってもこれで終わるわけでは当然ない。
ありふれた光景だからか、シキも特別指示を出してこなかった。
シキの胸元に頭を預けて息をつく。
なるべく下を見たくないから視線を横へずらせば、鏡の中の己と目が合った。
酷い顔である。
思わず笑ってしまう。
犬ではないのだから、口から垂れる唾液くらいは拭いたいものだ。



「悪趣味だな」
「お前が堪えればいいだけの話だろう」



軽く言ってくれる。
アキラは笑い、シキの肩口に歯を突き立てる。
とはいえ甘噛み程度のものである。
何度も歯を立てて吸い付いていたら、シキはいい加減飽きたらしい。
痛いくらいの強さで耳を噛む。
思わず痛みからうめき声をあげていると、その隙を狙ったわけではないのだろうが、さっさとアキラの腰あたりを掴む。



「待」



アキラがすべてを言い終える間もなく、シキの都合だけで物事は進んでいった。
幸いだったことは、それがその日二回目だったことくらいだ。
手を拘束されているおかげで体は支えなくあっさり落ちる。
喉が、おかしな声を発した。
息を漏らすような、痛みを逃がすような、何かを堪えるような声だった。
そうしてアキラがのけぞって露わになった喉仏めがけて、シキは力強く歯を立てた。







あなたののどぶえ









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