僕は鳥籠の鳥。空を飛ぶ術を知らないで、ずっと夢を見続けている、哀れな鳥。
空を飛べない鳥に、なんの価値があるのだろうか。もう翼は疲れきって、重力に従いへにゃっと下がっている。なんてだらしないのだろう。僕の翼はただの飾りもの。だから、僕がこの鳥籠から出れるのは、死ぬ時だけなのだ。
御主人様は、鳥籠を持ってこのお屋敷の焼却炉へ向かっている。『空を飛べない無能な鳥はいらない』のだと言っていた。そんな曖昧な記憶がある。日の光が窓を突き抜け、鮮やかなネオンが眼界に広がる。御主人様の長い銀色の髪がさらさら舞って、ネオンに溶け込んだ。死とは似つかない美観に、心がいっぱいに満ちた。
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轟き響いている炎は、まるで綺羅星のようで余りに綺麗だ。本当にこんなもので死ねるのだろうかと疑問に思う。でも、考えても仕方がないことだ。もう自分は死ぬのだから、最後に拝んだ御主人様の顔には表情がなくて、なんだか寂しがった。
バイバイ、御主人様
バイバイ、僕の愛した空
「ねえ、お嬢さん」
誰かが御主人様を呼ぶ。
「その鳥捨てちゃうの?なら、譲ってよ」
突然現れた彼は僕に手を差し伸べる。
「おいで……」
彼の着ている純白の服が、眩しく炎の色に照り映えていた。嗚呼、なんて朱が似合う人なんだ。
「はじめまして、アレルヤ」
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