もともととろいあたしは、急いで着替えたにも関わらず、一番最後に更衣室を出た。古賀ちゃんは更衣室を出てすぐの、体育館の壁に寄りかかって待っていた。 「急がないと、もうほんとに鳴るよ」 そう言って歩き出す古賀ちゃんの右肩が、なんだかいつもよりとんがっているように見えた。 「古賀ちゃん古賀ちゃん」 「ん?」 「お、おこってる?」 「今さら。あんたが着替え遅いからって別に怒らないよ」 「…じゃなくて」 「…ああ」 古賀ちゃんは全く歩調を緩めないまま、うーんと唸る。ちょっと間を置いて、古賀ちゃんは言った。 「わかんないなあ」 「へ」 「怒る、ていうか、むかついたかな」 「早紀ちゃん、に?」 「んー、なんか全部。早紀ちゃんにも、先生にも山西さんにも愛海ちゃんにも雨とかにも。…よく考えたら余計わかんなくなってきた。しかも恥ずかしくなってきたし」 どうしよう!と濡れた髪を揺らして笑う古賀ちゃんは、普段とまるで一緒だった。あたしは何となく、古賀ちゃんの気持ち分かるなあ、と思ったが、口にする前にチャイムが鳴った。 → [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |