「ジタン」
エラソーないつもの口調。
イーファの樹の暴走を逃れ、クジャをここ黒魔道士の村へ引きずってきてから早ひと月。
例の闘いで互いに付け合った傷がやっと癒えたところだ。
殺す気でかかったんだ。そんな簡単に良くはならないさ。
思ったとおり、時間はかかった。でも少しずつ確実に痛みは消えていった。オレの方は。
「水が飲みたい」
「おう」
クジャは違った。
ベッドから起き上がれない。
傷口は塞がった。
「背中が痛いんだけど」
「おう」
いつもの。エラソーなクチききやがるクセに。
以前のような覇気は何処へ行った
人を見下し高笑いをあげる元気を何処へやった。
「何か『音楽』が聴きたいな」
「おう」
「言っとくけど安っぽいイージーリスニングなんて僕は聴かないからね」
文句を垂れるけど
その視線はオレじゃなくて天井へ向いている。
それどころか天井の木目を突き抜け、もっとずっと遠くを見ている。
「いい加減そのワガママ直せよな」
傷は癒えた。
仲直り(っていうと元から仲良しだったみたいだ)もした。
なのになんだよこの態度。
ボーっとすんなよ。
こっち向けよ。
空を見んな。
──…なぁって。
「ジタン」
「おう」
「水が飲みたい」
「…おう」
なんで命は終わるんだろう
神様が、それを美しいと思ってるならクソ食らえだ
だってオレたちはまだ始まったばかりなのに
end
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鈴子さんの素敵企画『FF9の10周年をクジャジタで祝おうではないかフェスティバル』(脚色アリ)に投稿させていただきました
タイトルはMU●Eの3rdアルバムの収録曲から
「僕らにはもう時間がない」という感じの意味です
目線はジタンですが、これからの生がある者へ抱く『嫉妬』がテーマでした
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