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「バッツって一体いくつバイトやってるんだ?」
「さあな。」

6限目が終わり、説法のような授業から開放された教室はとたんに騒がしくなる。
今日はバッツが来ていない。昨日聞いた話によると今日から3日間朝からバイトが入っているらしい。
高校生がバイトで欠席だなんて言うあまりよろしくない事はできないので、大方仮病でも使ったんだろう。
まだあまり詳しく知らないけれどバッツも確か一人暮らしで、ペットが理由で寮に入れなかったからアパートを借りているらしい。
そんなに生活が苦しいのか。それともバイトが楽しいのか。
それ以前になんのバイトなのか。
前回はビラ配りと言っていたし、前々回はディナーショーの会場手伝いだと言っていた。
そのディナーショーのゲストが有名なマジシャンで、舞台裏も見たらしいのだが瞬間移動のマジックの仕掛けが『ものすごい速さで走って移動』することだとバラされたときにはガッカリした。
あれで息切れしないのはすごい!とバッツは感動していた。いや、そこじゃないだろ。
とりあえずバッツのバイトは単発、日払いが基本…ってことか。
生活が苦しくて朝からバイトをしているわけではなさそうだな。


「3人そろって遊ぶことあんまないよな、オレら。」
「その3人には俺も入っているのか」
「何言ってんだよ今更。オレら3人セットだからこそ女子から注目されるんだぜ。
 …いや、お前はピンでも立派な的だけどな。」

オレらはクラスでかなり目立っている方だと思う、我ながら。
顔は悪くないし、盛り上げ役だって買って出るし、なんてったって仲がいい。
女子ってそーゆーの好きだもんな。

3人そろってなんかしてると女子からの視線も増えてお得だから、できるだけ一緒に行動するようにしている(少なくともオレはそうだ)。
でも放課後となるとバッツのバイトやらオレの稽古やらでなかなか揃わないもんだ。
本日の原因である彼は今頃どこでどんな仕事をしているだろう。

「まっ、オレも今日は稽古直行だけどな。スコール一人でさみしいかと思うけど泣くんじゃないぜ?」
「……(どうしてそうなる)」



「おはよーございまーす」

会場に着いたらまず挨拶。
今日は場当たりなんで照明や音響のスタッフも揃っていて賑やかだ。
といっても小さな舞台だから演者あわせて20人かそこら。
小奇麗にしてある楽屋でジャージに着替え、持ち込まれた大量のお菓子の山からチョコをひとつつまんで一服。
他の役者も携帯プレイヤーで音楽を聴いたり、台本を読んだり、それぞれの時間を過ごした。
そろそろ行くか、と仕込み終えた舞台に上がり、大道具やマイクの位置をさらっと確認しながら発声練習を始めた。その時だった。


「!!?」

突然一台のピンスポがオレに向けられた。急な光量の変化で目が眩んだ。
避けようとしてもついてきやがる。こいつ明らかにオレを狙っている。
ちくしょー、役者を使って練習とはいい度胸「ジターーーンっ!!!」……え?

客席の真上、ピンスポの方向から聞き覚えのある大声。

「じったーーーーーん!!」

「だぁっ…おま、バッツ!!!!?何でいるんだよ!;」
「何でって、バイトに決まって…ぃってー!ごめんなさい!!」
『おいバイト何遊んでんだっ!!!!』
「おいおい…(怒られてんじゃねーか;)」

「なんだ、ジタンの知り合いか?」
「ああ、なんていうか、高校のツレです…」
「えっ、高校生?いいのか学校は(笑)」
「あいつは特別なんです……はぁ…」

なんてこった。バッツのバイトがオレらの裏方とは。しかもピン。
これは…ちょっと……恥ずかしいんじゃないか…?
だってオレ今回主役だぞ、恥ずかしい台詞だって言うんだぞ、それをずっと追われるハメになるのか?

…冗談じゃない!!

「すみませーーーん、そこのピンの人今すぐクビにして下さーいっ」
「ええっジタンそれは困…」
「わかった今すぐ」
「ああーースミマセン勘弁してくださいっ!!」
「オレが勘弁して欲しいっての!!聞いてねえよー!!!;」




結局降ろされることなくバイト1日目を終了させたバッツ。
ばっちり演技を見られて居心地が悪くなったオレは一緒に帰りたくなかったが、ボスが「連れが居るなら歩いて帰れ」と言って先に行ってしまったので、しょうがなく夜道を男二人で並んで帰ることに。
途中でバッツがニヤけながら台詞をマネしてきやがったので、アゴを一発殴ってやった。

当然のことながら、本番もコイツがピンスポだと聞いて更に気が重くなってしまった。






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誘われたバイトが偶然ジタンの舞台だったバッツです。
規模の小さいとこのバイトなら当日まで何やるか全く聞かされないことのが多…









あきゅろす。
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