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それはある日の情景。



九月の




ツナが机に突っ伏してる、具合でも悪ぃのかな。
近づいて声をかけた。可愛いつんつんした頭を上げてオレを見上げたツナ。不意に眼が合った、…ああ、可愛いな。可愛いなツナ、目ぇぱっちりさせて、どんぐりみてえ!
「うんなんでもない、次…体育だからさ、」
愛想笑いを浮かべるツナ。ツナが優しいってのは馬鹿なオレにだってわかる。
そうだな、次は体育だ。頭使わなくていい楽しい授業、昼メシの次にオレの好きな授業。あれ、昼メシは授業じゃねーか。
「あは、山本はスポーツ、万能だもんね」
ツナに褒められた! 良かった、マジで良かったオレ運動できて!
「ほんとすごいよねぇ、この間のスポーツテストも山本ぶっちぎりで学年一位だし、」
うわ、どうしようオレ今すげえ嬉しい、ツナに褒められてる、すごいなんて他の誰に言われてもなんにも感じなかったのに、やっぱりツナがすきだ! 可愛い、もっと見てたい、近くで見たい、…抱きしめたいなツナ、どんな顔するかな。喜んでくれるかな、そしたらオレ、オレ……、
「……本当にすごい、山本はいつもすごい。…おれ、なんでこんなに駄目なのかなあ……」
え? ……なに言ってんだツナ、ツナが駄目?
「だってさぁ、おれ…この間のスポーツテスト…ぶっちぎりで、学年、最下位…だった、し、それにね、先生にも『お前の個人得点、女子の学年最低点より下だったんだぞー』って…言われて、それってほんとのほんとに、男女あわせてみても…おれが一番わるかったって、ことだよね、」
あはは、って淋しそうに笑って、ツナ俯いちまった。どうしようオレのせいだよな、ごめん、ごめんツナ、オレ全然そんなつもりじゃなかったんだツナごめん。オレなんでいつもこんなに馬鹿なんだツナにはいつも笑っててほしいのに、なんでツナに笑ってもらえないんだろう。何がいけなかったんだろう、ツナ、オレの……
「…あ! やばいよ山本予鈴鳴ってる! はやく行かなきゃ、あの先生遅れた奴グラウンド10周とか無謀なこと言うんだもん、」
グラウンド10周はいい準備運動になるよな! ああよかった、ツナが普通の顔してる! あんなに淋しそうなツナは見たくない、ツナにはいつも笑っていてほしい、ツナには笑顔がよく似合うもんな!
それから、ツナには……、



「ほら山本! はやくはやく!」
ツナがあんなに大きな声でオレを呼んでくれてる、あ、なんか嬉しいな。ツナ、いつからあんな風にでっかい声だせるようになったんだっけ、なんか…いいな!
あれ? どうしたんだろうツナ廊下から窓の外なんか覗いて、そっからだと校門くらいしか見えないんだけどな。
「ん、なんでもない! 行こ!」
なんとなく気になってオレも覗いてみたけど、案の定なんにもなかった。人もいなかったし、ってこんな時間から登校してくんのは不良くらいのもんなのな! あー今日も空が青い! キレーな青ぞらが見れたからよかったよかった、あ、ツナもほんとは校門じゃなくて空みてたのか!
「やーまーもーとー! 先行っちゃうよーっ?」
ごめんツナ今行くすぐ行くから! な? んーしっ!
「うわ……は、はや…、ほんとに山本走るの速すぎだよ…」
そっかな、へへ。
「うん! やっぱり山本はすごいよ…!」
いい笑顔! いますげーいい笑顔で笑ってるツナ! キラキラしてる! ツナには笑顔がほんとに似合う! ツナにはいつもその笑顔で笑っていてほしい、そんでもって、いつもその笑顔をオレに見せててほしい! けど本当は……、
「わーやばいもうみんな整列してるー!!!!」
おっ! まじーなー!
「そんな悠長な〜っ山本ー! って、うわあ!!!!」
ん、なんだなんだ? グラウンド爆発してんぞ、今日ってなんかのイベントあったっけ。
「……ッ10代目! 困ったときのあなたの右腕、只今馳せ参じましたッ…!!」
「ちょ…っ! 獄寺くんなにやってんのなんで校庭爆破してんの!」
「そりゃあ決まってんじゃねっスか! オレがあなたを困らせる不届き千万窮まりない体育の授業、吹っ飛ばして差し上げるんです! 今日はダイナマイトの調達で朝お迎えに上がれずすみませんでした!」
「きみ、とりあえず謝るとこ違うからー!」
なんだ獄寺か。はははっやっぱおもしれーのな、けど…。
「もー! 獄寺くんダメー! それしまって! はやくてゆーかうわーどうしよーこれなんて説明すんのまた校長室呼ばれるよー…!」
……けど、もうツナ、オレにあの笑顔向けててくんねーのな、ツナ、もう獄寺獄寺アイツばっかり……。
ツナには笑顔がよく似合う。獄寺がいると、ツナ、そりゃ笑顔だけじゃないけど…淋しそうな顔もあんま、しない。淋しそうなツナは見たくない、けどツナの笑顔を独占されるのは、
…………

ツナには、いつも笑顔でいてほしい。けど、本当は、ほんとうは、あの笑顔は…オレに、オレだけに見せててほしいのに。


ダイナマイトが豪快に爽快に、なおもどんどんグラウンドを吹き飛ばしていく。一緒に、オレのジメジメした浮かない気持ちも巻き込みながら。


…っあー、すげえカラッとした秋晴れ! 今日はほんとに空が青いのな!







FIN.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


20060925















あきゅろす。
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