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    初夏の風
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 朗らかな風が一陣、カーテンをはためかせ窓を抜けて教室を巡れば、うららかにたゆたう草木の匂いが肺に満ち、早くも初夏の到来を予感させた。
(もうそんな時期なんだな…)
 獄寺は窓の外へ向けていた視線を斜め二つ前の席に着く人物へと向ける。網膜へ飛び込んできた艶めかしい亜麻色は、真昼の眩しさのなかで一際光彩を放っていた。細く柔らかな絹糸を思わせる少年の髪はところにより黄蘗にも葡萄茶にも飴色にも見えた。不思議な色合いだと思った、こんなに人を惹きつけて止まない存在は彼以外にありえないと思った。あんなにきれいなものが今自分と同じ空間にいることが信じられない、そうそれこそが奇跡に思えた。
(同時にこれは救済だ)
 視細胞をみるみるうちに焼き尽くすあの人の後ろ姿。
 可視色の限界を越える様な美しすぎる彩色。
(オレの眼があの色しか判別出来なくなってもいい)
 同じ男とは思えないほど細く、白いくびすじ、うなじ。
(やべェ…噛みつきてぇ……)
 華奢でまるい肩、そこから伸びるほそい腕。小さめな掌からは繊細すぎる指先。
(…折れそうだ……)
 痩身のたおやかな肢体、妖揺色香を放つ細腰からつづく男にあるまじきほどに丸く柔らかなまろみをもつ双丘。
(…………)
 すらりとしたその脚線は今は制服のズボンに隠されているが…
(…!?て、つか、オレ……ヤベッ…)
 ジンジンと酷く熱く疼く己の下肢を覆う布地の誤魔化しようもない盛り上がり方に獄寺が顔を真っ赤にして慌てだす頃、ななめ二つ前の席の綱吉はじいっと時計を凝視しながら、あと15分で訪れる四限目の終了を心待ちにしていた。
 
(あと15分…)

−−15分経ったら獄寺君と山本と一緒に屋上行ってゴハン食べよ−−

 そっと首だけで獄寺を振り向く。
(だってほら)
 だらだらと滝の如く汗を垂れ流す赤い顔をした男がそこにいた。

−−今日はこんなにあったかい日だし。























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