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「え…や、やだ…何して…!」
「チューブの使い道が尿道プレイじゃなくて良かったと思って下さいよ、あれ痛いらしいじゃないスか」

 握ったそのチューブで勃ち上がったツナの中心を縛ろうとする獄寺。ツナのしとどに濡れたいとけない茎が震える。呑気に言って退ける獄寺に穏やかならぬものを感じて、流石のツナも身を攀り抗おうとするが。

「何い……っぁわッ、」
「ちょっと大人しくしてて下さい」

 言うが早いか獄寺はツナを組み敷いたまま片手ですぐ傍のコンセントプラグを引き抜き、鮮やかな手並みでその黒いコードでツナの両腕を一纏めに括り上げた。実験用途のこの黒台がコンセント口の有る仕様であったのをツナは初めて恨めしいと感じる。

「スリルも時には大事っスよ、」

 粗野な視線を向ける獄寺。手元はしっかりとツナのその場所を捕えて。

「それに10代目はいつもあっさりイき過ぎる」

 クリアチューブを今度は楽に結び付けながら喋る。今は顔ごと視線を下に向けている為ツナからは獄寺の表情を読み取ることが出来無かった。

「……ひどい…、よ…」

 ぽつりと呟いたツナに獄寺は一言、我慢して下さい、とだけ言った。


 今夜が満月だったことをツナは初めて知る。
 ちらと垣間見た獄寺の肩越しに月が浮かんでいた。まるく、欠けた部分の無い完全な望月。丁度獄寺が逆光となっていた。皚々と室内が照らされている、獄寺の翳に位置するツナを除いて。獄寺とツナの間にのみ残る暗闇。隔絶された世界の様だとツナは感じた。



「ッ…ぁっ…!」

 ツナの中へ入れたままだった試験管を獄寺が引き抜く。馴染み留まっていたそれが急に動き内壁を擦って、軽い眩暈に似た感覚と緩やかな快感の波が四肢を伝った、同時に付随する喪失感。虚になったなかを埋めるものが早く欲しくて溜まらずに獄寺を見上げた。快楽を追うツナの潤んだ睛が揺れ。
 獄寺の喉が一度上下する、獰猛な色の滲んだ気配をツナはけどった。獄寺は自身のジッパーを下ろし、既に張り詰め大きく形を変えた熱塊を引きずり出す。幾度目にしても、ツナにはあれが自分と同じものだとは思えなかった。

「…挿れますよ……、」

 掠れた煙草嗄れの声が鼓膜を震わせた、

「アああアァッ…く、ヒあ、ぁ、んッーー……ッッ」

 燒杭が穿ち入る秘苞は是非も無くソレを受け入れ。強制じみたそれは理や非に問えぬ不条理さで狭い肉筒を犯す。

「……ッと…スゲ、……ッ」

 絡み付きひどく締まるツナの中が直接自身へと与える絶悦に眉間を寄せて耐えながらも不敵な笑みを口端にのせ。獄寺は内部の蠕搾が安定し落ち着くのを待った。常ならばこの時点でいつも熱を解放しているツナはしかしビニルチューブによる束縛によって射精を阻まれていた、それが齎す初めての感覚。身体中に炎粉を散らせる様な疼みと酷い火照りに身悶える。足先までもがびくびくと引き攣った。

「…辛い…っスか?」

 獄寺が、その長い指で瞼を強く閉じ烈感に耐えるツナの髪を宥める様に撫で梳く。

「目を開けて、オレを見ていて下さい。……一緒に気持ちよくなりましょう、」

 10代目、とツナに呼びかけ。獄寺は律動を開始する、体内を熱く灼き蕩かす剛く確かな注挿、男の引き締まった腰部が生み出す確固とした快感に意識まで翻弄された。気まぐれに、ゆっくりと幹や雁先を肉壁に擦り付ける様にする動きにも、又激しく快源の前立腺目掛けての狙いを澄まして幾度も大きくスライドさせて叩き付ける腰つきにもツナは気が違いそうな程の愉楽を覚えた。淫靡に打ち震えるツナの肢体は今や逸楽の汗にひどく濡れ薄紅に染まりしどけないその有り様に獄寺は尚も激しく欲情する。淫らに腰を浮かせるツナ、その陶然とした表情にも怺えようも無い恍惚を感じ。

「ヒあッ、ア、あぁア…ぅく、ンンん…ッッ!」
「10代目…、愛してます……」
「んゃ…ッあ、ああ、ッ…ふ、ンんん、…ぁッ」
「…誰よりも…オレが、」

 徐々に位置を変えてゆく月、静かな闇夜が広がっている。落莫のそら、閑寂のなかで響くのは、性的で淫猥に漏れ出す水音と震えて途切れ途切れのツナの嬌声、互いの乱れた吐息、睦言だけだ。

「愛すると……、誓います」

 艶事の最中には余りにも不釣り合い過ぎる真摯な声音で。告げる獄寺の誓言は欣快にとらわれるツナの耳には届かない。
 それを分かっていながら敢えて言葉にするのだ、口元に自嘲めいた笑みをのせ。
 火傷しそうな程に熱し熔けた繋がり、そこはもう境目など始めから無かったかの様に二人を融和させていた。

「…ぁく、ごくで、……くうぅっ…んッも、ひあ、ゃ」
「……もう、限界スか」
「ぅんも、もお、らめ、ぁめ……だよっぉ…!」

 わかりました、そう呟いた声が何処か酷く切なげに聞こえて。ツナは獄寺の表情を読み取ろうとしたが、逆光線による影によってそれは叶わない。獄寺は無言のまま、ツナ自身を縛り付けていたチューブを解いた。



 止める手段など皆無な牡の本能。
 幾度か烈しく揺すぶって、ツナの最も感じる直腸内部の突起を責め立てれば、不本意な辛抱を強要させられていたツナは赴くままに呆気なく達した。熱情を解放するツナの全身を喩えようも無い歓楽が襲い迸る。獄寺もツナに合わせて同時に放吐した。奔流が溶解した鐡火の如くツナの最奧迄も行き届き充たす。何も考えられなくなる程の陶酔と満足感にツナは圧倒された。




*******






「…身体どうスか……?」

 水道水に濡れた手を拭いながら、獄寺は理科室の木床に座るツナに声をかけた。仄白い光に晒された室内は本当に静謐で、余韻に浸りつつ熱を覚ますのには丁度良い。

「…ーあ、平気だよ…、大丈夫」
「…なら、いいんスけど」

 ほんの少しの間の後に口をひらいたのはツナだった。


「あの、さ…獄寺君…」
「なんスか…?」

 またもや暫しの沈黙。すこし経ってからツナはぽつりと零した。

「……なんでこんなトコで、その、し…しよう、と思った、の……?」

 あんまりにも可愛らしいことを言い出すツナに獄寺は絶句し呆気に取られた。

「そ……、それに、こんな……、今日の獄寺君、なんかすごい…イジワル、だったし」

 怖ず怖ずと顔を赤らめて小声でためらいがちに喋るとんでもなくいじらしいツナに、獄寺は内心堪んねえなと呟きながら敢えて溜め息をついてみせた、それから咳払いをひとつ。

「コホン、……えー、10代目。いいですか」

 いつかの水泳練習の時のような教師口調で獄寺は語り出す。

「男という生き物はですね、本能に忠実なんですよ、」

 10代目だってそうでしょ、と獄寺は言う。

「えー、そうかなあ?」
「さっきまであんなに啼きまくってイキたがっていたのはどこのどちらの10代目サマでしたっけ」
「……ッ!! わーわーわーわー何言ってんのっ!?」

 そもそも、と。一旦目を伏せてから、再度視線をツナに戻した獄寺はどこか今し方までの彼とは違った雰囲気を纏っていた。なんだかそこはかとない危険の様なものをツナは察知する。

「物理学論に態々付随させた理由に価値など無い、という事です」
「ぶつ……???」
「……要するにですね、実験器具がそこにあったからとか理科室に10代目というシチュエーションに男としてムラッときたからとか泣いて懇願する10代目が可愛い過ぎたから苛めてみたくなったとか今日が満月だったからとか、そんなの全部どうでもいいことなんスよ、所詮はどれも後から取って付けた理由なんですから」
「まだ、よくわかんないんだけどオレ……」
「ですから、わかんなくてもいいんです、そこに意味はないんスよ。形而上学形而下学、なんて後付けに拘らなくていいんです、」

 そこで一度言葉を止めてから、獄寺はツナを真っ直ぐに見据えた。

「オレ的に、敢えて付ける理由があるならそこに貴方がいたから、です」

 獄寺がその筋肉質な双腕を伸ばし、掌をツナの左右の壁に付ける。ツナにとってはちょうど獄寺に閉じ込められたかたちとなった。

「へ……っ?」

 間近に迫るその男らしく整った端正な顔貌は今、獲物を前にした野獣を思わせる野性的な笑みを浮かべ。頬をみるみる内に紅潮させてゆくツナが獄寺の言葉の意味を知って更に顔面を赤らめる頃には、獄寺がその“物理学論”をツナに身を以って再教育することになるであろうことはいうまでもない。








       fin.       


















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