1859net【今日の1859】
さよなら

(※幼馴染パラレル)




たった4文字なのに、どうしてこんなにも重い。

「留学、って、どこに。」
「イタリア。親戚いるし、良い学校見つけたんだよ。」

ひとつ年下の僕の幼馴染は、頭が良かった。
僕は先に高校を卒業して、地元の大学に進んだ。
この子は、今までずっとそうしてきたように、今度も僕と同じ道を辿ってくるのだろうと、思っていた。
それは、僕の、ただのエゴだった。
自信があった。この子はきっと僕についてくる。
ずっと。

ずっと、というその言葉の定義をよくは知らないけど、こんなにすぐに終わりが訪れるものだなんて、思っても居なかったよ。

「多分、向こうに行って落ち着くまで、2年間は、帰ってこれない。」

俯いてそう言った隼人の肩は頼りなくて、細くて、

愛しくて、  。

「・・そう。」

本当は。
君と離れる日が来るなんて考えたこともなくて。
それはもう当たり前のように一緒に居たから。
2年という歳月が、途方も無いくらい永遠のように感じられた。

兄弟、なんてとっくの昔に通り越してた。感情が、通り越してたのに。
君に伝える前に、君は海の向こう側へ行ってしまうの?
だから、本当は、行かないで、って、ああ、だめだ君を困らせてしまう。
こんな出国間近まで僕に黙っていた君のその弱さ故の意地を、僕が壊してしまってどうする。

沈黙が重い。
外は寒くて、雪が降ってて、傘も差さずに僕たちは互いに俯いたままで。
ふと目線を上げたら、緑色とかち合った。

「はや、」

ぐにゃり、と歪んだ表情。泣いてるの?
ああ、泣いてるのは僕も同じだ。

堪らなくなって抱きしめた。腕が、体が、脳の言うことを聞かなくなった。
ずっと封印してたのに。君を、僕は。

初めて腕の中に閉じ込めたその体は、思っていたよりずっと小さくて、薄っぺらくて、温かかった。

「ひ、ばり・・っ」

みっともないくらい二人で泣いた。
泣き虫だね、僕たち。どうしようもないくらい君がすきな僕も、みっともなくて惨めで、でも君が。


「さよなら」

小さく呟いた声が重なった。
どちらも震えていて、滑稽で、でもそれはとても綺麗で重かった。




FIN.
(2008.02.17)












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