ぼくはきっと永遠に


***

になれない

***


ねえ、知っている?
僕の気持ちを、その重さを、せつなさを。


「10代目が」

「んで、山本のヤツ」

そうやって嬉しそうに話してくれるのは、僕だって嬉しいのだけれど。


君が他の人間の名前を口に出すだけで、君が他の人間のことを考えていると思うだけで、
(ぼくはちっそくしてしまいそうだよ。)


言葉はきっと繊細で、空気に触れたら死んでしまうから、
僕はそれを、ごくりと嚥下する。君に伝わる前にきっと、温度が下がってしまう。
それを一々口にすることで、何かが得られるのなら、こんなちくちくとした痛みなんて感じないで済むのに。

獄寺は白い。
白いから、怖くなる。

例えばよく晴れた日に、応接室の白いカーテンに隠れて口づけをするとき。
真っ白な獄寺が、怖くなる。
光に呑まれて消えてしまうような気がして、すごく怖くなる。

(君を失ったら、)

いつからこんなに弱くなってしまったんだろうか。
獄寺が好きで、好きで、どうしようもなくて。
他人を想うことがこんなにも素晴らしくて苦しいなんて知らなかった。
心の中と頭の中をずっと獄寺が支配していて、それすら気持ちよくて、
獄寺が一緒の気持ちだと言ってくれたから、はじめて奇跡を信じた。

愛し愛され無償の愛なんてフィクションの世界でしかあり得ないことだと思っていた僕に、
愛することの素晴らしさと苦しさと、嬉しさを教えてくれたから。
もしこれが世間から見放されるものだとしても。


「は、っひ、ば・・、ぁ!」
「・・・っ、」

どんなにこれが非生産的で醜いものだとしても、獄寺は変わらず美しかった。


****


ちょっと恥ずかしいんだけどね、君寝てるから。そのまま聞いて欲しいんだ。
僕の中の君の存在というものが、もうすでに絶対になってしまっていて、どうしようもなくて、
悔しいんだけど、もう仕様が無いくらいに君が好きなんだよ。
君が今起きてたら笑うんだろうけど、ほんとに、これは君が思っている以上で。
あー・・もう、何て言ったら良いのかな、好きになるって綺麗なだけじゃないんだね。
僕はこうして君を汚すことがすごく、その、嬉しいし、君が沢田なんかのことを嬉しそうに喋るのにはいらいらするし、
だから・・うん、綺麗なところも、汚いところも全部ひっくるめて僕を見て欲しい、って言ったら良いのかな。
僕の気持ちと君のそれを天秤にかけたらね、天秤が壊れちゃうくらいにきっと僕の方が重たいよ。
ねえ、獄寺、君はそんな僕でも、

「ひばり、すき。ちゃんとすきだから、そんな顔すんなよ。」

起こしてごめんね。
(ああもう、どうだっていい。)

それと、泣かせてごめん。
(君が居てくれるなら。)


****


いっそ君になりたいと、思う。
一つに溶け混ざってしまえば、こんなどす黒い気持ちを抱えなくても済むのに、なんて考えたあとで、
一つになってしまったら、もう君にこうして触れられないな、と気付いて僕はちいさく笑ったんだ。




FIN.
(2008.05.27)

君に成れない、君に慣れない。










あきゅろす。
無料HPエムペ!