「鉢屋先輩はどうして俺なんかに構うんスか?」
俺には不思議でたまらない。別に委員会が一緒なわけでもないし、特別仲がいいと言えるわけでもない。それなのにこの人は気が付けば俺の傍にいる。認めるのは不本意だけど…例えば俺が迷子になったときだとか、例えば無性に一人が淋しくなったときだとか。そんなときは決まって俺を見つけてくれる、傍にいてくれる、「三之助」って名前を呼んでくれる。
「へー、ほぅ、三之助は理由が知りたいと」
「そ、そうっす」
にやにやと鉢屋先輩が悪戯な笑みを浮かべた。なんだよ、馬鹿にしてんの?そう思うと、胸が小さく軋んだ。ちくしょう、聞かなきゃよかった。なんていまさら後悔しても遅いけど。
「…やっぱり、もういいです。俺は作と左門のとこ戻るんで」
ふいと視線を外して踵を返す。なんだろ、ちょっと。胸が苦しい。答えを知りたかった?そうかもしれない、だっていつももやもやとしてたんだから。でもこの人はきっと真面目に答えてくれやしない。なのに不意に手を握られて、俺の胸はどきりと跳ねた。
「いいのか、聞かなくて。本当に」
「い、いい…っす、よ」
「…顔、赤いぞ」
すっと細められた目、浮かぶはニヒルな笑み。なんで、どうして。この人の声を聞いてると熱に浮かされてるみたいに頭がくらくらする。
「三之助」
腰にそっと手が添えられた。包み込むように握られた手も壊れ物に触れるように、だけどいっそう強さを増した。触れられてる場所から熱が俺を犯していく。
「愛してる」
囁くような、少し掠れた低い声に堪らず息を飲んだ。上気した顔を隠す暇も、ましてや術もない。
知りたくなったから
聞いたんだ
「これがお前の傍にいる理由」
なんならもう一度囁こうか。耳元で聞こえる声はくすぐったくて、愛おしくて。俺もこの人が心底好きなんだと気付かされた。ねぇ、先輩知ってる?俺にとって先輩の傍はひどく心地いいってこと。
俺もです、愛してます。
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次屋企画「君の手を引いて歩こう」様に提出しました
鉢次すごくマイナーですよね、大好きなんですが
少しでも鉢次に興味持っていただけたら嬉しいです
(090728/琴原)
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