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構成要素
・童貞の道程の後日談
・学パロ
・精神的だてさな
・雌伊達
以上よろしければ、どうぞ↓



















1.

「はぁああ…」


毎朝、想い人を探し、期待と不安を胸に視線をめぐらせていた昨日までが嘘のよう。
幸村は背中を丸めて、深くため息をつき、通学路を歩いている。


昨日、幸村は童貞を卒業した。
それも愛しき想いを寄せていた者の手によって。
そして晴れて、お付き合いをすることになった。
この順序がおかしいことは、昨日まで生息子だった幸村にはほとんど知る術が無い。

それよりも、学校であんなとんでもないことをしてしまった自責の念で、人生初めての憂うつな心持ちを絶賛味い中の、幸村である。

それに、未だに昨日の出来事が信じられなかった。
しかし腰に残るこの疲労感は確かに本物だ。

「はぁああ…」

幸村はまたため息をついた。


昨日の出来事がじわりと頭の底からわき上がる。
あの後下校時刻ギリギリに門を出て、政宗を家まで送った。
別れ際にされた触れるようなキスが、また幸村の熱を呼び戻し、政宗がドアを閉めたと同時に近くの公園の公衆便所に駆け込んだ。

夜も、瞼を閉じれば、蘇るのは政宗のあられもない姿。
幸村は心の中で土下座をしながら何度も抜いた。


お陰で今はふらふら、正直政宗を探す気力も無いほどで、なんだか申し訳なさと情けなさで、政宗を見つけたとしても、正直どんな顔をして彼女に会えば良いかわからない。
政宗に会いたい…けれどやっぱり会いたくない…もやもやした遣る瀬ない気持ちに、今からでもすぐに家へと逆走たくなる…
なんてことは今までの高校生活では経験のないものだった。

集約できぬ様々な気持ちを抱えたまま、しかし真面目な足は惰性で学校へと向か

「真田幸村ぁあああああっ!」

「ぐばはぁ!!」

ドッシーン!

突如後ろから襲った結構な質量に、ぼんやりしていた幸村は軽く舌を噛んでしまった。

「な、何…」

振り向いて、絶句して、固まった。
背中には、今まさに幸村の心を占めて締めて止まないその人が、張りついていた。

「だ、だだだだだ」

「Good morning、幸村」

政宗は顔を上げ、幸村に笑いかけた。
昨日までの彼女からは想像できない程、優しく、とろけそうな笑みが、幸村の両の瞳に大映しになる。
腰に回された腕に、ぎゅうと力が籠もった。

「だて、どの」

「NO!その呼び方止めろっつったろぉ!」

唇に、真っ白くて細い指が優しくあてられる。
幸村はぐうと口を結んだ。

「まさむねって、呼べ」

少しむくれたように、上目遣いで政宗は言った。
不機嫌そうに寄せられた眉間さえも、愛らしい。

「わ!幸村鼻血ッ!」
「へっ?」

幸村の左鼻の穴から、血が垂れた。















2.

「ったく。抱きついただけで鼻血出す奴があるかよ」

「め、面目無い……」


政宗は憮然として、弁当の包みを解いていた。
今は昼休みで、場所は屋上。
貯水タンクの陰が、絶好のランチスポットを作っている。
二人はそこに居た。
そよ風と弁当包みをとく音だけがする。
幸村は居心地悪そうに正座のまま肩をよじらせた。



「あの…だ…だてど」

「Shut up!!!……『まさむね』だ」

「……まさむねどの…」

「Good」


ツンとした政宗の横顔を盗み見る。
相変わらず愛らしくて、見惚れてしまう。
と、目が合った。

「なにジロジロ見てんだよ…」

「う"っ」

地を這うような低い声に思わず背筋が伸びる。
下から睨み付けてくる政宗から、視線が逸らせない。それはとても鋭く、蛇に睨まれた蛙というのは、まさしくこの状況。
幸村はごくりと唾液を飲んだ。

「ぷ」

「えっ」

「ふふ…あははは!なあんてな。
もう俺は幸村のモンなんだ…いくらでも見て、いいんだぜ…?」

言って、たった今の様子が嘘のよう。
今度は猫のような瞳と所作で、するりと幸村の懐に入り込んだ。

「まっ、政宗どのぉ!!?」

「ほら、よぉく見ろよ?」

向かい合わせにのしかかられる。
先ほどとは打って変わり、上から細めた瞳で、ひどく愉しそうに見下げられる。頬に指が触れる。

「うぁああ…!」

昨日の教室の情景が、目の前の政宗にたぶる。

「うぐ…ぅぐあぁああ"!」

(だ、駄目だっ!!!駄目だぞ真田幸村ぁああああ!)

己の中の鬼が呻き声を上げる。
男の何人もが心の内に飼いしその名は、性欲。


「So cuteっ!!」


幸村の心中で、戦の狼煙が上がったのも露知らず、政宗は目を回す幸村にがばちょと抱きついた。

「あぁん可愛い可愛い可愛いっ!!!」

政宗はその首に頬擦りしながら、黄色い声を上げた。

(あ…やはり…駄目だ…)

幸村は魂ここに在らずな様子で、されるがままになっていた。










その一部始終を穴が開くほど凝視するものが数十名。

「くっそくそくそぉ何なんだよアイツぁあ"!」

「全くだよいきなり政宗たんと仲良くどころかイチャイチャしやがってくそ」

「それにしても…政宗たんのあんな声、聞いたことねぇぜ…」

「あぁ…」

「うん…」

その場の数十人はうなだれた。
そう、この十数人こそ、この学校にまことしやかに存在が噂される、「伊達政宗見守り隊」の彼らである。
その動向は闇に包まれ、伊達政宗嬢に組するものあらば問答無用で成敗してしまう恐ろしき精鋭部隊…
…というのは尾鰭や背鰭で、実際には集団で政宗をストーキングし、「政宗たんの成長記録」を毎日付けるのを日課とした、至って普通の男子生徒たちである。

今日も今日とて政宗を遠く見つめていれば、何と朝から政宗たんが男に抱きついているではないか!
あの孤高を守りし気高き政宗たんが!
しかもその男と昼休みになる今まで、授業中以外片時も離れていないという有様…!
見守り隊リーダーの男は忌々しげに唇を噛み締め、しかし観察を続行する。















「あーん」

「ぁ、あ…ぐむぉお」

開けさせた口に、政宗の青いお箸が、つまんだ卵焼きを押し込む。
さっき抱きつかれた熱も冷めやらぬうちに、幸村の状態を分かっているのかいないのか、政宗は思い立ったように弁当をときだした。幸村はその気分屋そのものの変化に目をぐるぐるさせて、やはりされるがままだ。
そして政宗が幸村の膝に乗り上げたまま、冒頭に戻る。

「どうだ?」

幸村に密着しながら、頭を撫でる。
あまりにも至近距離で、幸村が咀嚼するのを見つめている。
不安と期待を抱きながら、おおきな猫目が揺れる。

ごくり
幸村が、ゆっくりと、卵焼きを嚥下した。

「う…」

「う…?」

「うまい…」

「――――!」

それを聞いた途端政宗は、それはそれは嬉しそうに、破顔した。

「Really!?ホントに?ほんとにほんとか!?」

「ええ…えぇ…この、口に入った時の、醤油の僅かな焦げの香ばしさ…それに…中はふわふわで…物凄く、美味いでござるっ!!!!」

その美しい笑顔につられて、幸村も花が咲くような笑顔になった。
いつしか幸村の中の鬼は成りをひそめ、ただ、愛情のたっぷりつまった美味しい弁当を、愛しいひとと食べることに夢中になっていた。

一膳の箸で、食べさせて、自らも食べる。
まるで新婚そのものの二人の半径5メートル以内には、誰も居なかった。







「ごちそうさまでござった!!」

行儀良く、正座で手を合わすと、幸村は深々とお辞儀をした。

「…べ、別に…料理好きだし…こんなんなんともねぇよ…」

幸村からの真っ直ぐな感謝に、政宗が少し頬を染める。
ちょっと俯いて、もじ…とぺたんと座った脚をすりあわせた。

「それより…もうbell鳴るから教室戻るぞ」

「おお!そうでござるな!」

すっくと立ち上がった政宗の後ろ姿に、あわてて幸村も立ち上がる。






「先戻ってて」

「政宗殿?」

教室の近くまで来た時、政宗が言った。
幸村は空になったお重を抱えながら政宗を見る。
俯いている。

「ま、政宗どの!調子が悪いのでこざるかっ!?」

「Don't worry…大丈夫だ 」

言うと政宗は駆けていってしまった。
予鈴もまだ鳴っていないし、時間はあるが…
心配で、不安で、体調が悪いのか、自分が何かいけないことでもしたかと、今までしたこともない憶測というものが脳内を飛びかう。

しかし政宗は言った。
先に戻っていろと。

「……」

幸村はだいぶ思案した後、教室に向かった。
多分に忠犬気質の幸村は、政宗の言葉を早くも絶対視し始めていた。










「はぁ〜…」

急いで個室に入って鍵を閉めた。
扉にもたれかかると、ずるずるとしゃがみこんでため息をつく。

「やばい…」

政宗はゆっくり立ち上がると、自分のスカートをぴらっとめくった。
そのまま中を覗きこむ。

「……」

そして顔を上げると、今度は一気に下着を下ろした。
「Oh…」

深い青の地に涼しげなレースをあしらった、多少政宗の身なりには不釣り合いなその下着は、股との間に透明な糸を引いていた。

(まだ染みてなくてよかった…)

実は幸村の食事を見ている間、政宗はずっと催していた。
丹精こめて作ったものたちが、至極美味しそうに、嬉しそうに幸村に食べられて行く。
えもいわれぬ幸福と愉悦が政宗をいっぱいにして、
あやうく絶頂してしまいそうだったのだ。

「shit…」

恥ずかしさといたたまれなさに苛まれながら、政宗はトイレットペーパーで股をぬぐった。








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