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平凡×俺様




新倉飛鳥ーニイクラアスカー
179cm
金髪
俺様超美形



田山和也ータヤマカズナリー
173cm
黒髪短髪
平凡な容姿だけどブス専





*******





「田山ーーーー!!」




今日も今日とて、新倉飛鳥の大きな声が校門前から鳴り響く。


下校中の生徒達は、もはや恒例となっているこの光景に微笑みすら浮かべていた。ただ一人、和也を除いて。



「はー……、毎日毎日貴方も懲りないですね」



迷惑そうにため息を溢したのは、飛鳥の目当ての人物田山和也。


顔・スタイル・身長、どこをどうとってもそこら辺にいそうな平凡な彼だが、普通の人とは違う事があった。それは―――



「田山好きだ!俺と付き合え!」

「お断りします。というかそこ、通行の邪魔なんで退いてください……」



眉間に皺を寄せ、和也はシッシッと飛鳥を追い払う。


そう、田山和也は超美形な新倉飛鳥に好かれていた。


あれは何時の頃だったか、偶々道に迷っていた飛鳥を助けたのがきっかけで、和也の事を好きになった飛鳥。


他校なのにも関わらず、毎日毎日和也の下校時間に合わせ校門の前で待ち伏せしては、大きな声で告白する。


一応言っておくと飛鳥も男で和也も男。


いくら同性愛に寛容になった時代とはいえ、ここまであけっぴらに告白されては世間の目が痛くて仕方ない。


最初の頃は目立って好奇の目に晒されていた飛鳥だが、いつの間にか周りに受け入れられ、今ではクラスの女子に応援される程溶け込んでいた。


確かに飛鳥は美形だ。女性っぽい顔立ちではいし寧ろ男前な方なのだが、驚く程綺麗に整えられていてそれはその気がない男でも、不思議と魅いられる何かがある程完璧な顔。


欠点があるとするならば、それはその偉そうな性格ぐらいだろう。


それ故周りからは一度ぐらい付き合ってあげればいいのにとか、飛鳥君ならいけるでしょうとか、平凡×俺様美形萌えーとか、時々訳の分からない事を言われながらも飛鳥を勧められる毎日。


この際男同士とかは置いといて、どんなに周りに美形だとかイケメンだとか言われても、和也にはちっとも魅力的に見えなかった。


何故なら彼がブス専だからである。


幼い頃から人と好みがずれているとは感じていた。大抵好きになる子はクラスで一番モテない子だったり苛められていたりと、とにかく人が聞いたら趣味悪と言われるような子ばかり。逆に周りから可愛いとか綺麗とか言われるような子には惹かれなかった。


大きくなるにつれ自分がブス専である事を知り、人とは好みがずれているが寧ろ競争率が減ってこれはこれでいいのではと思い始めていた今日この頃、現れたのが飛鳥だ。


飛鳥の出現により、男子も女子も微笑ましそうに和也と飛鳥の行く末を見守り、和也は他の子と恋愛どころではなくなった。


一応和也も毎回毎回告白される度にはっきりと断るのだが、それでもめげない飛鳥。一度きつめに貴方の顔がタイプじゃないと本心を告げるも飛鳥は毎日現れる。


最近では和也もすっかり諦め気味で、付き合う気はないが飛鳥の好きなようにさせていた。



「ぅう、クソッ、……俺の何処がそんなにダメなんだ?!」

「顔」

「……ぅううっ」



飛鳥はショックを受けたように顔を歪ませて、それを見ていた女子達は田山君ひどーいと和也を非難する。


どうして自分がこんな目にと現実逃避していても、目の前の飛鳥が消える事はない。なんだか急に苛立ちが沸いた和也は、言ってはいけないと思いつつもつい口にしてしまう。



「あー、もういい加減にしてください!迷惑なんです!僕は貴方なんかタイプじゃないし、寧ろキモいです!」



それだけ言って和也は駆け出した。


視界の端で傷ついた飛鳥の顔が見えたが、気にすることなく帰路につく。


帰ってから頭に浮かんだのは傷ついた飛鳥の顔。やはり少し言い過ぎたかもしれない。でもまぁどうせ飛鳥の事だ、こんな事でへこたれる奴ではない。けど、一応明日になったら謝ろう、そう決めて和也はその日は寝る事にした。


しかし翌日飛鳥は現れなかった。


下校時間をいくら過ぎても校門の前に飛鳥の姿はない。


昨日現場を見ていた生徒達からは、きっと田山君が言い過ぎたから傷ついて来ないんだよと責められて、流石の和也も良心が咎めてか飛鳥への罪悪感が募る。


やはりいくら迷惑だからといってもあれは言い過ぎたのかもしれない。きっと今までフラレた事のない飛鳥は、和也の言葉に深く傷付いたのだろう。


なんせあの顔だ。和也にはちっとも魅力的に見えないが、周りはとても騒いでいた。普通の人から見たら飛鳥はきっととても美形なのだろう。


まぁだからと言って和也にはどうする事も出来ない。変に期待を持たせるよりは、傷ついてもきっぱりフラレた方が飛鳥の為でもある。どうせ平凡な和也の事などすぐ忘れて、もっといい人と巡り会うだろう。


そう思って一人家へ帰っていると、何処かで聞いた事がある声が和也の耳に聞こえてきた。



「――ねぇ、君あそこの高校でよく見る人だろう?やっぱ間近で見た方がカッコいいね」

「そうそう、超イケメン!所で俺達と遊ばない?」

「……結構だ、手を離してくれ」

「そんな事言わないで俺達と遊ぼうよ?君ほどじゃないけど、俺らもまぁまぁイケてるっしょ」

「………手を離せといってる」

「なんだよ、男が好きなんだろ?だったらちょっと位いいだろ、俺達と楽しく遊ぼうぜ?いっぱい気持ちよくしてあげるし」

「離せといってるだろ!この愚民共!」

「…なんだコイツ、ちょっと美形だからって調子乗んなよ。俺らが遊んでやるって言ってんだから」



路地裏で三人の不良っぽい奴等に絡まれている飛鳥を見つけ、和也は知らず知らずの内にため息をつく。


人通りの少ない今、見るからに飛鳥の状況は良くない。しかも飛鳥のあの偉そうな性格も出て、ちょっと本気でヤバい雰囲気だ。


本来ならこんな面倒な事にけして自分からは突っ込まないが、昨日の件もありどうしても飛鳥を見過ごせなかった。


もう一度和也はため息をついて、言い争いを続ける飛鳥達の元へ向かう。



「……ちょっと」

「何だお前」

「おい、部外者は向こう行っとけ」

「た、田山!!」



壁際に追い込まれて腕を捕まれている飛鳥の方に近寄り、和也はその腕の拘束を解く。


驚いて和也を凝視している飛鳥はほっといて、今にも和也に殴りかかってきそうな三人の方を見る。



「おい、お前何者だ?」

「この人の知り合いです」

「あ、コイツあれじゃね?この美形が好きだっていう奴」

「マジかよ、めっちゃ普通じゃん!俺てっきりすんごいイケメンかと思ったのに」



普通で悪かったなと内心思っていると、和也の後ろから飛鳥は身を乗り出し野次を飛ばす。



「田山を馬鹿にすんなっ!」

「ちょっ、貴方は黙っててください」

「あ?マジであんたコイツが好きなのかよ」

「ヤベー、腹いてーー」



ゲラゲラ馬鹿笑いする三人に、和也よりも飛鳥のボルテージがあがる。


しかしこれ以上飛鳥が出ていっても火に油を注ぐだけで、余計ややこしくなりそうなのでなんとか飛鳥を宥めて三人に向き合う。



「あのー、この人見逃してもらってもいいですか?」

「ハッ?なにいっ――」

「まぁ、ちょっと待てよ」



一人の男が何やら仲間に耳打ちをして話している。


ニヤニヤ笑っているその顔からして、きっと録な事ではないのだろう。


また、ため息をつきそうになるのを和也はぐっと堪えた。



「おい、お前が土下座して謝ったらコイツ見逃してやるよ」

「はぁ?!何言ってんだよ!そんな事田山がする必要ないだろ!」

「んじゃ、あんたが俺達に付き合ってよ、そしたら――」

「やります」

「……え?」

「たがら、やります」



そう言って和也は地面に額をつけ、土下座した。



「どうかこの通りです。見逃してください」



背後から飛鳥の止めろという声と、三人の馬鹿笑いしたが聞こえたが和也は止めなかった。


頭の上に誰かの靴を乗せられグイグイ踏みつけられ、額が擦れつけられ少々痛いが、和也は唇を噛み締めて耐えた。



「はは、情けねー」

「ホントホント、マジ惨め」

「まぁ今回はお前のその土下座に免じて許してやるよ。行こうぜー」



三人はそう吐き捨てるとさっさと何処かへ行ってしまった。


和也は声が聞こえなくなってから頭をあげると、俯いてブルブル震える飛鳥が目にはいる。


幻滅されたか。こんな格好悪い姿見せつけられて、さぞ嫌になっただろう。自分の何処を好きになったかは分からないが、土下座なんて格好悪すぎて、一発で目も覚めるだろう。


そう思って立ち上がろうとした和也だが、飛鳥からこぼれ落ちる涙を見て慌てて駆け寄る。



「大丈夫ですか?何処か怪我でも――」

「ごめん、なさい……」



近付いてきた和也を抱き締めて、飛鳥は謝罪する。


さっきとは違う焦りにわたわたするが、無理矢理振りほどくのは何故か躊躇われる。それに何だか飛鳥からは凄くいい匂いがして、こんな時だが少しときめいた。



「……俺のせいで、ごめん」

「…………何で貴方が謝るんです。別に僕が勝手に助けただけで、貴方のせいじゃない」

「でも……!」

「それより、幻滅しないんですか?僕はあんなカッコ悪い姿見せたのに」

「カッコ悪くない!田山はカッコ悪くなんかないぞ!」



抱き締めていた腕を解いて飛鳥は和也を見つめる。


真剣なその瞳に軽薄や幻滅の色はない。寧ろ熱い甘いその瞳はしっかりと和也を捉えていて、目は口ほどに物を言うとは本当なのだなと和也は思った。



「田山は全然カッコ悪くなんかない!寧ろ凄くカッコ良かったぞ!俺の為に土下座までしてくれて…」

「もういいですから、帰りましょう」

「良くない!俺、俺やっぱり田山が好きだ!田山は俺の事好きじゃないって分かってるけど、でも、好きなんだ……!」



ポロリ、飛鳥の目から涙が一粒溢れ落ちる。


人とは好みがずれている和也でも飛鳥の涙はとても純粋に綺麗に思えて、気付けば飛鳥に向けて手を伸ばしていた。



「貴方の顔はタイプじゃないけど、貴方の泣き顔は結構タイプだ……」



一瞬の内にぼうっと赤くなる飛鳥の顔を見て、初めて和也は飛鳥の前で笑った。


その後もめげずに和也にアタックする飛鳥に、和也が落ちるのはもう少し後のお話。


おしまい


あきゅろす。
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