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毎年何故このメンバーなんだ、とか、何故それを疑問に思わないのか、なんて聞きたいことは山ほどあるのだけれど、どうやら彼らにとってはそれが至極当然のことらしいから、ため息が出る。










「お、やっと起きてきたか」

「俊、相変わらず低血圧やな。お邪魔しとるぞ」

左手に掴んでいた携帯を見やる。八時二十四分。自分にしては早い時間だ。欠伸をかみ殺しながら瑞垣はもう一度前方を見た。やはり見間違いではないらしい、そこには俺の方に笑いかける二人が居た。


「これ、旨いな」

「じゃろ?もっと食ってええよ」


まるで栗鼠みたいに頬に蜜柑を詰め込んでいる生物(いや、栗鼠のように全く可愛げはないが)に側にあったダンボールから一つ拝借した蜜柑を、そのにこやかな顔目掛けて投げつけた。


「うわっ、何や危ないやろ」

「ナイスキャッチ」


危ない、なんて言いながらも軽々と蜜柑をキャッチする生物に舌打ちをする。くそ、受け止めるんじゃねぇよ。生物はその受け止めた蜜柑の皮をむき始めた。ぼろりと皮が剥がれる、下手くそめ。

「門脇、こうやったほうが剥きやすいぞ」

「ああ、なる程。…俊、そんなとこに突っ立っとらんとこっちこいよ。コタツ暖かいぜ」


いったい誰のせいだ!今度は左手の携帯を投げつけそうになって、どうにかして耐えた。全く朝からなんて拷問だ!


「海音寺、寄れ」

「ん」


瑞垣は生物、もとい門脇と一緒に居た(ここは瑞垣と海音寺の家なのでこういう表現もおかしいのだが)海音寺の側に寄るとコタツに足を突っ込んだ。


「冷てえ!」

「あら悪いわね、秀吾くん」

「足押しつけとるやろう!」


知ったこっちゃない、俺は暖をとっているだけだ(秀吾図体が無駄に大きいのが悪い、コタツが小さく感じる)ふと海音寺を見ると、蜜柑の皮を綺麗に剥いていた。一房を口に入れようとしている。


「一希ちゃん」

「ん?…あぁ」


ぱかりと口を開けた瑞垣の口に、二房を放り込む。口を閉じると甘い蜜柑の味が広がる。確かに、旨い。


「秀吾、いつから来てたんや?…おい、何笑ってる」

「え…いや、それ無意識か?」

「は?」


門脇はにこやかに笑うと(何だその笑顔は!)海音寺のほうを向いた。きょとんとした海音寺にまで笑いかける。何だか背筋がぞわりとして身震いをした。寒さのせいではないだろう。


「海音寺、お前愛されとるなぁ」

「え?」

「はああ?何や秀吾、変なこというな、きしょい」

「やっぱ無意識か」


机に頬杖をついて、海音寺と瑞垣を交互に見つめる。至極楽しそうに笑うのに対して、瑞垣の眉間には深いしわがよっている。


「わざわざ狭いところ入るなと思うたんや、無意識やろうけど海音寺の横ちゃんとキープしてる」

「は、気のせいやろ」

「しかも蜜柑貰うとき幸せそうな顔してたぞ」

「門脇!それ本当か?」

「あぁ」


くそ、いったい何やこいつらは!何でこんな正月の朝から!そこまで考えてふと気がついた、そういえば今日は元日だ。


「そんなことより、言うことがあるんやないか?」

「…あ、そうじゃった!あけましておめでとうございます」

「忘れとった、あけましておめでとう二人とも」

こいつらのペースは俺の調子をことごとく狂わせるのだ。上手く話をそらせた。このままこいつらのペースに乗せられるのはごめんだ。


「で?朝飯は?」

「何言うとるんじゃ、今日はお前が当番じゃろ。起きてくるの待ってたんじゃぞ」

「えー、俊二くん昨日頑張って疲れちゃったあ」

「嘘吐け!俺ばっかり動かせたじゃろうが」

「昨日?なんかしたんか?」

「こいつ最悪なんじゃ、自分から動こうとせんくせに、俺に命令ばっかするんじゃ」

「?」

「何よ、昨日は一緒に寝て、優しく可愛がってあげたのに」

「!」


俊の発言に耳を疑った。二人の仲はどんなものか知っているし、偏見なんかしない。けど、こんなにどうどうと言って良いものだろうか?


「い、一緒に寝たんかお前ら?」


「一希ちゃんがどーしてもっていうから」

「誤解を招くような言い方するな。…仕方ないじゃろう!あの部屋で一人なんて堪えられん」

「おかげで楽しめたけどな」

「…悪趣味」


これはのろけられているのだろうか、いや、俊はわざとかもしれないが海音寺はわざとではないだろう。…ということはのろけか。


「ちょ、それ以上言わんといてくれ」

「何でじゃ、門脇は瑞垣のことよう知っとるじゃろう?叱ってくれ」


門脇としてはこの会話を終わらせたかった(それこそさっきの瑞垣のように)しかし瑞垣のように話が上手いわけでも機転がきくわけでもない。聞いてはならない単語が飛び出しそうで、内心ひやひやしているのだ。


「自分のもんぐらい、自分で処理しろ、おかげで俺大変じゃった」

自分のものは自分で処理?ダメだ、頭が回らない、どうしても、あっちのほうのピンクな空気しか想像出来ない。…俺は邪なのだろうか。


ふと気がつくと瑞垣の顔が近くにあって門脇はぎょっとした。瑞垣と目が合う。ニヤリ、と口角が上がったのを見て、しまったと息を呑んだ。


「秀吾くんのエッチ」

「な!?」

「はあ?瑞垣、何言うとるんじゃ」


訝しげな海音寺にニヤリと笑うと、瑞垣は門脇の肩をポンと叩く。こいつ、わざとはめやがった!門脇は顔に熱が集まるのを感じた、海音寺が理解していないだけましだ。


「門脇どういうことじゃ?」

「いや、何もない!それよりほら、朝食作ろうぜ、俺も手伝うから」


コタツから急いで出たかと思うと海音寺を急かす。海音寺はちらりと瑞垣を一瞥して立ち上がった。そのままキッチンへと歩いていく。瑞垣はテレビのリモコンをテレビへとかざした。


「働かざるもの食うべからず」

「は?…っうわ!」


門脇は驚いた。自分の顔すれすれを餅らしき白い物体が飛んでいったからだ。瑞垣はそれをなんなくキャッチすると、ため息をつきながら立ち上がった。


「一希ちゃんたらそんなにかまって欲しいの?」

「阿呆、朝食にありつきたいんじゃったら手伝え、俺よりお前のほうが上手じゃろうが」


そうきっぱりと言い放つと海音寺は門脇と瑞垣に背を向けた。冷蔵庫を開けて中身をチェックしている。門脇はす、と瑞垣が立ち上がるのを感じた。そこからの動きは速かった、いつの間にか海音寺の後ろに回り込み、背後から冷蔵庫内へと手を伸ばす。びくりと小さく海音寺が揺れた。


「餅いくつ食べる?」

「まかせる」

「ん、」



慣れたことなのだろうか。自分だったら恐らく小さな声をあげてしまっているだろう。何だかそんな光景が微笑ましくて、門脇は一人笑った。俊に言わせたら気持ち悪い、と言われるのだろうけれど。だがきっと海音寺は一緒に笑ってくれるだろう。


あぁ何だか今年は良い年になりそうだ!










初詣にいきます


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