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☆おけ☆


次の日、令さまはクッキーをたくさん焼いてきた。
でも、どのクッキーもほんの少し焦げていた。
お菓子作りが上手な令さまだけど、失敗もあるのだろう。

けれど、たったそれだけのことなのに…お姉さまの怒りが爆発した。

あの細い腕のどこにあんな力があるのか、イスやテーブルを投げたのだ。
窓ガラスは割れ、破片が飛び散った。
まさか、お姉さまがそんな暴挙に出るとは誰も予想しておらず、止めに入ることも、言葉を発することすら出来ずにいた。
お姉さまの暴走は止まらず、更にエスカレートしていくばかり。
そんな中、一番に動いたのは令さまだった。


「ごめん、祥子。作り直すから、だから落ち着いて」


いつもだったら、ここでお姉さまは正気に戻っていただろう。
しかし、今日のお姉さまは一味違った。


「ごめんで済んだら警察はいらねェんだよ!指詰めて誠意を見せんかい、我ェ」


素晴らしい巻き舌だった。
お姉さまは怒りのあまりに真っ赤に染まった瞳で、令さまを睨みつけている。
本職の方も腰を抜かすのではないかと思う程の恐ろしさだった。
祐巳は、お姉さまの豹変振りに、ただただ見ていることしか出来なかった。
それは祐巳だけではなかったのだけれど。

薔薇の館が恐怖に包まれたとき、またもや令さまが動いた。


「お主、何様のつもりじゃ!お主のその腐った脳みそくり抜いてウニを詰めてやろうぞ」


そう言って、令さまが構えたのは真剣だった。
それは照明に照らされ、鈍く光る。



─もう、誰にも止められない。。。



その後、お姉さまたちは警察に捕まってしまった。
懲役3年の刑となった。

黄薔薇は由乃さんが受け継ぎ、紅薔薇は祐巳が受け継いだのだがショッキングで食事が出来ず、やせ細って入院した。


かくして、紅薔薇の時代は終わった。
いや、山百合会の時代が終わった。




という夢を見た。
何と縁起の悪い夢だ。
顔を洗って気分転換しよう。

祐巳はベッドから降り、階下へと向かった。
令さまがクッキーを焦がさないことを祈りながら。。。









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