まいの初恋
【恋愛短編小説】
まい「こんばんわー!だれかお話しませんか?」
たく「こんばんわ^^いいですよ。」
まい「たくさんはおいくつですか?」
たく「20だけどそっちは?」
まい「私は17です!どこに住んでるんですかぁ?」
たく「愛媛県。そっちは?」
まい「私もです!」
これが私達の出会いでした。
タクとは「チャット」の中で知り合った人。
私から声をかけ、それに答えるかのようにタクは話をしてくれました。
すべて話題は私から。
よく話す子だねといわれていたけど、それはチャットの中のお話。
実際私はそんなに話すほうではありませんでした。
だから会うのをずっと拒んできました。
タクは私の中で気の合う一つ年上の先輩友達って感じでした。
でもタクは私のことを好きだといってくれました。
だから一度会って話しがしたいって。
でも・・・・・。
私は友達からもブスとよばれ、相手にもされていないいじめられっ子です。
そんな私に会ってしまったらきっとタクは私のことを嫌いになってしまう。
でもタクはそれでもいいから会いたいんだと言ってくれました。
だから決心しました。
どんなにブスでもタクならきっと私を受け入れてくれる、そう思ったからです。
次の日、私は一人で町に出ました。
今流行の服を買い、今まで使ったことも無い化粧品を買い、参考にする雑誌を買い。
かかった予算は七万ほど。
小学生の時から貯めていた貯金を降ろし、予算は残りわずかとなりましたが、そんなことタクに会えるなら苦にもなりませんでした。
タクと会う日まで後一週間。
それまでに私は断食をし、ダイエットを心がけ、買ったばかりの雑誌を見ながら化粧の練習もしました。
誰が見てもブスな私にも恋愛をする権利があるはず。
タクに嫌われないように、毎日が地獄でしたが、それでもやはりタクを思うと胸が張り裂けそうになり、頑張ろうという気持ちがもてました。
たった一週間のうちに私は3キロ減量することに成功しました。
お腹周りも前に比べて細くなり、腕も大根のような足も、見違えるように細くなりました。
「これならきっと大丈夫」
私は初めて自分に自信がもてるようになりました。
これも全部タクのおかげです。
早く会いたい。
会ったら何を話そう。
どんな風に話せばいいかな。
どんな人なんだろう。
きっと優しい人なんだろうな。
そんなことを考えながら、私は眠りにつきました。
朝になり、ついにこの日がやってきました。
私は今までどおり練習した化粧をし、あの時かった服を着て、髪型を整え、ブランド品のバッグに財布を入れ、玄関をあとにしました。
バスに乗り、タクとの約束の場所までおよそ2時間。
バスの中で私の心臓は張り裂けそうなくらい大きな音を立てていました。
タクとの約束の場所に近づくにつれ、緊張のあまりに、冷や汗が額から零れ落ちました。
震える手と足を押さえながら、私は目をつむり、タクのことを想像しました。
きっとタクはすごく素敵な人なんだろうな。
「銀天涯」
バスをおり、約束の場所にとうとう着いてしまいました。
急いで着いたことを知らせるためにタクにメールをしました。
「今着いたよ。緊張するー(;;)タクはどこにいるの?」
返信ボタンを押し、携帯を閉じ、タクからの返事を待つこと5秒。
すぐにタクから返事がきました。
「はやいなー。メールが来るのを待っててくれたのね。うわぁ。緊張するー!」
私は待ち受け画面からメールボタンを押し、受信BOXを押しました。
すると、タクのボックスにメールが入っていなく、一番上の受信BOXというところにメールマークがついていました。
「え・・・・?何・・・・?」
受信BOXを押し、メールを見てみると、そこには
『返信先エラー』
と表示されていました。
そしてタクのアドレスが記載されていました。
私は間違えて送ったのかと思い、もう一度タクにメールをしました。
「受信完了しました」
やっぱり間違えて送ってたんだな。
と思うのも束の間、またすぐに送ったメールが戻ってきました。
携帯が故障したのかな?と思い、私は待ち合わせした場所でタクを待つことにしました。
けれど、たくは姿を見せることはありませんでした。
タクを待つ間、私は通る人すべての人に笑われました。
「なにあの化粧?ひどくない?」
「ケツでか!二の腕とかやばいじゃん」
涙も出ませんでした。
5時間待ちました。
何を言われようが、私はタクに会えたらそれで幸せ。
雨が降り始めました。
7時間まってもタクは現れることはありませんでした。
家に着いたとき、もう一度タクにメールをしました。
これで何百回目だろう・・・。
さっきと同じ、
「返信先エラー」
タクとはこれ以来、チャットでもメールでも連絡を取ることができませんでした。
「タク・・・・」
裏切られた、普通ならそう思うことでしょう。
でも私はタクに出会えて変われた。
そう思っていたから、タクのことを怨むことなどできるはずがありません。
きっと何か理由があったんだ。
そう心に言い聞かせ、不安を凌ぎました。
次の日、学校へ行き、昼休みの弁当を一人で食べていると、後ろの席の男子のグループから思いもよらない会話が耳に入りました。
私はそれを黙って聞いていました。
そしてすべてが明らかになったとき、もうこの教室にはいられなくなり、鞄を持ち出し、学校を早退しました。
溢れ出てくる涙も拭うことなく、走り続けました。
初めての恋。
それは叶うことも無く、伝えることも無く、伝わることも無く・・・・・。
「お、タクからメールきたぜ。やっぱ会うのはやめるってよー。
あたりまえだよなぁ。あんなやつを好きになるくらいなら、他の女好きになれってんだ。たった一週間で変われるわけないっつーの」
「おぉ、写メサンキュー。こんなにブスだとは思ってなかった(´д`;)
ほんと会わなくてよかった。感謝感激雨荒らし!(笑)」
人は、顔じゃない、心だと、そう思ってチャットで出会いを探していた私。
こんなことになるのならば、出会いなんて探さなきゃよかった、タクに出会わなければ良かった・・・。
もう、二度と恋なんてしない・・・・・。
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