愚かでも無謀でもなんでも、ボクは君の最後の希望になりたい。
辛くても哀しくてもなんでも、ボクは君の最後の、光になりたい。



.トワイライト アリア.





「約束だよ」

微笑んで伸ばした手が取られることがないことくらい、ボクには分かっていた。
それでもボクはこの手を君に伸ばしたし、君はそれを一瞥してから嘆息した。

君がボクの手を拒むことなんて分かりきっているのに、どうしてボクは手を伸ばすのだろう。

「シェゾ」
「……なんだよ」
「約束だよ」

もう一度、ささやいたボクに視線を合わせた君の手を、ボクは無理矢理に絡めとった。
君の肩がかすかに揺れたことに気づかない振りをしてボクは君を見上げた。

君が人の温もりを恐れていることに、ボクはもう気づいていた。
君が自分の生き方を否定されることを嫌うことに、ボクはもう気づいていた。

だけどボクはあえて君に触れるんだ。

敢えて君の心に入り込むようにぎゅうと、君の手を握るんだ。
どうか伝わればいい。
ボクのこの手の温もりが君に届けばいい。

少しだけでも。

「ボクは此処にいるから」



約束をしたい。どうか。
どうか。

闇の魔導師である君がどうか最後の一線を越えてしまわないように。
どれだけ人の死体の上を歩いてきたのだとしても、どれだけ君が闇を象っているのだとしても。

ボクが君に触れること。ボクの温もりが、君の生きてきた道を否定するものなのだとしても。

それでもボクは君に触れるんだ。
そして約束をするんだ。
ボクは此処にいるから。

「ボクの魔力を奪いに、帰ってきてね」

ボクは此処にいるから。ボクは此処にいるから。
僕がいるこの世界に。どうか。



「アルル」

君が震える声でボクの名前を呼ぶことを、ボクは嬉しく思った。君がボクの名前を呼んでくれること、少しずれたノリでお前が欲しいと叫んでくれること、その全てがボクを幸せにしてくれるから。

だからボクもそれを君に返したい。

だって君は闇の後継者だけど、人間でいていいはずなんだ。人間でいることを捨てる必要なんて無いはずなんだ。

人の温もりを感じること、それは、人間であることの証。

「だってきみは人として生まれてきたんだよ」

温もりが怖くてもいい。必要の無いものと切り捨ててさえしまわなければ。
君がこの世界を切り捨ててしまわなければ。

「だから帰ってきてね、此処に」

人の世に。

(君の声以上にボクの声が震えていたことに、君は気づいただろうか)
(だってボクは怖いんだ、君を無くすことが)

(だからボクは君が人でいるための、最後の希望でありたい)



「約束だよ」
「アルル、」
「やくそくだよ」
「……ああ」

別れ際に君が握り返してくれた手は、確かに。



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シェ←アルっぽい。なんか状況がさっぱり分かりませんが必死にシェゾを「こっち側」に引き止めるアルルさんが書きたかったんですよー。それでそれに癒されちゃったりとかしてるシェゾか書きたかったんですよー。
(かけてないけど)


あきゅろす。
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